7月26日(水)兼ねてより訪ねてみたかった、湘南平塚を拠点として実践する「サスティナブル・アグリカルチャー・スクール」の現場(圃場)に行ってきました。
何と、自宅から徒歩5~6分ほどの数年前まで借りていた畑のすぐそばにありました。畑から眺める団地はさながらドラマの中のワンシーンのようで、まるで別世界から自宅を眺めているような不思議な感覚でした。
畑から自宅のある団地を望む
遠くに湘南平のテレビ塔が見える
今回お話を伺ったのは、ここ平塚でサスティナブル・アグリカルチャー・スクールを運営する(株)いかす 代表取締役の白土卓志さん、カルチャースクールの講師でもあるアースケアテイカーの内田達也さんです。※アースケアテイカー=「地球と人に優しい農家」
白土さんたちは、神奈川県湘南地区の畑にて肥料や農薬を使わず自然の力で育つ「たんじゅん野菜」をつくり、宅配をしています。また、たんじゅん野菜を使った東京青山のレストラン「iCas storia」を運営し、自宅で受賞シェフの味を気軽に楽しめる「自宅でフルコースシリーズ」のデリバリーも行っています。もっと繋がり、もっと楽しくなる、オーガニックに生きるサービスを皆様へお届けしています。他に加工品製造事業、生産事業・生産サポート事業も行っています。
(株)いかす https://www.icas.jp.net/
何故、ここ平塚でアグリカルチャー・スクールをはじめようと思ったのか、また今後やってみたいこと、オーガニックタウンの未来構想についてお話を伺いました。
右が白土さん、左が内田さん
オーガニックタウンを湘南で!
白土さん
湘南は海・山・畑がある。まさに地産地消のできる街だと思いました。東京でオーガニック野菜を使ったレストランを経営していますが、野菜はここで育てた有機野菜を使っています。この畑で育てた野菜を都内に配送しているのですが、東京のお客様だけに提供するのではなく、湘南地域の人たちにも食べて欲しい、地産地消の実践をしたいと考えました。また、オーガニックタウン化構想を湘南地域で推進するため「湘南オーガニック協議会」を立ち上げ、「暮らしやすい・働きやすい・学びやすい街」づくりを市民参加で実現したいと考えています。
事業を始めるにあたって農地を探していたところ、いくつかの候補地があったのですが、何よりも、直感的に気持ちのいい場所だったこの出縄の地に決めました。当初は耕作放棄地だったため、雑草が蔓延りゴミが散乱していました。最初は、開墾し、更に野菜が収穫できるまでになるとは正直思いもつかないような状況でした。
ここはハクビシンやカラスはいますが、イノシシや猿はいなさそうです。イノシシは防ぎようがありますが、畑は猿が出たらおしまいなんですよね…。
実は先週から、南原のヨークマートにコーナーを設けてもらったんです。お店の定員さんに味見をしていただいたところ「見た目が綺麗、食べておいしい。こんなおいしい茄子は久々に食べた。野菜の甘さが口に残り、後を引くおいしさがある。」という反応が返って来ました。プロの方に味で評価されたことは本当に嬉しかったです。この技術がオーガニックだと自信を持って言えます。人工的にコントロール・管理されて規格品として市場に出回っている野菜とは、そもそもつくり方の手法が違うんです。
見た目も綺麗で食べても美味しい!後を引く甘さがある、と評判の野菜たち
自然にも人にも優しい農業を目指す
内田さん
僕は自然の摂理に逆らわないで野菜をつくること、それが人にも自然にも優しい姿だと思っています。野菜作りが上手くいかないからとか、いい土をつくるためとか、虫がつかないようにと、化学肥料や農薬を使いますね。大規模農園を経営している農家さんからは農薬をまかない有機農法は虫がつきやすいので嫌われてしまうのですが…。(畑が隣り合わせた場合、虫の被害を受けてしまうと考えられているため)
天敵を住まわせて外敵を近づけない農法、これが本来の自然の姿だと思います。例えば麦にはあぶら虫がつきますが、てんとう虫(天敵)があぶら虫を食べてくれます。てんとう虫が飛んでくる農園になればいいという考え方なのですが、今はてんとう虫さえ売っている時代なんですよ。
植物のポテンシャルを高めるには種の段階から関わり、自らの力で生きていけるようにしてあげる。若ければ若いほどその環境に慣れようとします。植物でいえば双葉になる頃の環境教育が一番重要とされています。植物の根っこにある根毛(根の周辺に細かい毛が生えている)と人間の腸内にある絨毛は素人の目には見わけがつかないくらい似ているんですね。人間も生後1週間で腸内環境が整うと言われており、たくさんの人に抱っこされることによって腸内環境も育っていくのです。
よく野菜が上手くできないと言う方がいます。土を耕し苗を植え、肥料をあげて、たまには薬も撒いて…。間違いではないのですが、土壌生態系を学び適切に観察し愛情を持ってお世話することが大切なんです。
森のサイクルはご存知ですよね?落ち葉が腐葉土になり、そこには何万という微生物と天敵が住み腐葉土が分解されて土が肥え、その栄養を充分に吸収して立派な木に育ち、森を守る。森には命がいっぱいあるんです、まるで宝庫です。それと同じ考え方なんです。うちの畑には微生物がたくさんいて常に循環を生み出しています。
取材中もさりげなく草むしり
微生物が作り出す世界
内田さんの眼には何百万という微生物の動きや、土の動き、作物の根の一本一本の根毛の動きまですべて見えているのかもしれません。森羅万象、この世界の生あるものはすべて自然の摂理に則って生きていくことが自然であり、それが持続可能な社会を作り出す、ということにつながるのかな、と思いました。
たくさんの命にふれることが癒しにつながる
白土さん
人とのつながり、という話が良く出ますね。災害の時の向こう三軒両隣のつながりが大事とか、異業種間とのつながりが新しい価値を生みだすとか言われています。「なぜ人はつながりたいのか?」というと、人間って、たくさんの命と触れ合うと自分を解放することができ、高揚感が増し元気になるんです。コンサートに行ってたくさんの人たちとワイワイ楽しむと元気になるでしょう?それと一緒。たくさんの命と触れ合っているからなんですよ。畑にくるとたくさんの命に触れることで自分が癒される。都内の殺伐とした中で仕事をしていると週に一度はこういう環境に来ることで気持ちも癒され元気になる。そういう循環を生み出していくことも大事かなと思うんです。
アグリカルチャー・スクールについて
いかす平塚圃場
東京から約1時間の湘南で、革新的な技術を学び、仲間・自然・未来とつながる
インゲンの時期はもう終わりに近い…
現在、サステナブル・アグリカルチャー・スクール 第1期募集中
募集期間:2018年9月〜2019年2月(秋冬6ヶ月間コース)
入学受付期間:2018年6月1日〜2018年8月31日まで
次回説明会:8月19日(日)13:30~
自然や人に優しい農業を仕事にしたい。美味しくて安全な食を届けたい。
そう志しても、自然栽培や有機農業について体系的な知識や技術を包括的に学べる機会は少なく、「オーガニック農家」を諦めてしまう人も多い日本の現状。
長時間労働による疲弊・安定した収入を見込めない・迷った時に相談できる指導者がいないなど、
新規就農者の多くの悩みは、「圧倒的な技術力」不足に起因しています。
学びに来ている方は家庭菜園をやっている方、定年後の時間を有効に使いたいと考えている方、就農を考えている方、有機農法に関心のある方など多様だそうです。説明会は誰でも気軽に参加できるそうなので、行ってみませんか?
▼お問合せ・申し込み
▼スクールの紹介動画は☞こちら
これから目指したいこと
白土さん
・地産地消の世界 local organic
まずは湘南地域で地産地消のオーガニック野菜があふれている街
・地産地消のできない東京は、湘南に遊びに来やすい畑を共同農園として持つ
そして、そこの野菜を日常的に食べながら、非日常で畑に遊びに来る。
・ブルーベリー園もやりたいと思っています(笑)もちろん、オーガニックで!
そう語る白土さんの頭の中には既に構想は出来上がっていて、近い将来実現するような気配を感じました。
取材の前日に雨が降ったため、たくさんのキノコが生えていました。
糸状菌ってやつです( ^^)
取材を終えて・・・
お話を伺っている間、キュウリ、茄子、トマトを捥いで味見をさせてもらったのですが、とにかく瑞々しくて甘かった!お二人の話の通り、野菜が生きていると感じ、畑にいるたくさんの微生物の息遣いを感じたように思いました。これは、私自身がこれまで見たり作業したりした畑にはなかった感覚です。たくさんの命に包まれたような温かな気持ち、これが癒しというものなのかもしれません。
「畑のプリンス」と呼ばれている内田さんの講義も受けてみたいし、美味しい野菜を自分でもつくってみたい。また畑にお邪魔させていただきます!ありがとうございました。
ライター 坂田美保子