平塚あじさいまつりで有名な市内西部に流れる河内川のお話です。

昔、町を横切る悪名高い生活排水路だった川を、カワセミが飛ぶ川に変え、町の中心的シンボルとして愛し、遊び、育てた活動の歴史です。あじさいの会の石井豊会長、副会長の木村美江子さん、広報担当の菅野由美子さんから、詳しいお話しを伺ってきました。活動の始まりは川をきれいにしたい、子どもたちのためにもこんな汚れた川にしておいてはいけない、そんな思いでしかなかったと言います。活動を進めていくうちに、地域のさまざまな課題に気づき、また多くのつながりによって活動の幅が広がってきたと話す木村さん。もっと地域の人にこの活動の意義を知っていただき、そして協力してほしいと願っています。

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旭地区と河内川

旭地区は、相模平野の西の端の大磯丘陵に接する。北と東は金目川を境とし、南は高麗山麓。その中央に河内川が流れています。河内川は金目川から水を流し、河内川となり、下流の金目川に戻る。新幹線が通る高架線より北側には田園が広がる地域です。

あじさいまつり

平成17年から始まったこのおまつりも今年で11回を数えました。この日に訪れた人々は3,000人超。子どもから大人までの幅広い年齢層の人が、あじさいの咲くこの季節を心待ちにしています。

目に映るあじさいを楽しめるのは、鎌倉橋(平塚市公所)から下河原橋(山下)までの約1.4キロ。その河内川の景色と空気の色をつくるあじさいは、両岸に、等間隔で植えています。七彩に咲くあじさいに、たくさんの思いを込めて育ててきました。

地域の中で実行委員会形式で実施しているこのお祭り。協力団体が出店し、子どもたちにはあじさいの萼を使った万華鏡作りやクイズラリーなど、回を重ねてみんながあじさいロードを存分に味わえるようになってきました。

Prologue 序章

昭和29年。旭村と平塚市が合併、その時は大いなる農村地帯であり、流れる河内川を含めてのどかな田園風景を構成していました。時が経つにつれ、現在の河内や纏等、市街地として開発されていきます。昭和40年頃には、不幸にも河内川は農業用水路に生活雑排水が流されるドブ川に変わり、時には自転車が数台投げ込まれる悪循環。町が大きくなるにつれ、川の水質や河岸周辺はワーストランキングにあがるまでに至りました。

Chapter 1

美化推進、旭北地区の美化推進委員長高橋正一氏を中心に「子どもたちが川の中に入って遊べるような環境にしたい」と河内川をきれいにする運動を開始。河内川のゴミを回収するも、なかなかゴミが無くなることに繋がりません。そこでシンボルとなる花を植えてはと、「木であり、草であり、花である」というあじさいをセレクト。河川の管理をしている神奈川県土木事務所に河川岸にあじさいを植える申請をします。活動を継続して行うという気持ちに県が理解をし、約2年の時を要して許可を得て、平成4年植樹が始まりました。

Chapter 2

あじさいの会の前身となる「河内川紫陽花を愛する会」(現:河内川あじさいの会)が平成7年に発足。河内川河岸にあじさいを植栽する団体として活動を開始。活動の成果はすぐには芽吹きません。植栽について地域の理解を広めるのにも時間が必要でした。活動資金の調達もできない状態でも、尽力し合ってあじさいを植栽していきます。

Chapter 3

通年通水で平成15年、河内川の水量が豊富になり、川が復活しました。県・市を巻き込んだ地域関連農業関係者等との調整・説得の末、河内川上流の広川取水が実現。平塚市の「よみがえれ古里せせらぎ事業」で河内川の環境整備は大きく加速します。豊富な水が流れることにより河内川には、フナや鯉などが金目川下流から音を立ててのぼり、清流の象徴として知られる野鳥のカワセミが飛ぶ景色が戻りました。また、平塚市や地域の小学校を巻き込んだ「河内川生き物再生活動」が展開されていきます。河内川あじさいの会の会長石井氏は「河内川に通年通水で水が流れることにより川が生き返った」と、当時を振り返りながら言葉にしました。

Current Situation 現在

生き物しらべ が平成19年から始まり、人が集まる川への活動を始動しました。故・浜口哲一氏(元平塚市博物館館長、神奈川大学特任教授)を講師とした「河内川生き物しらべ」には、旭小・松延小・勝原小の子ども達が集います。子どもが生き物とふれあったり、遊んだりすることから、学ぶ心を育てたい。そして、次の世代が、河内川をきれいにする大人・親の活動を理解して継承してくれたらと願います。現在は神奈川県環境科学センター斎藤和久氏に講師が引き継がれています。

湘南里山見守り隊。あじさいの会のきれいな川にきれいな心というメッセージは、河内川だけに留まりません。河内川の主流となる金目川に同じような思いをもって集まる湘南里山見守り隊に団体で登録します。

旭南へと。さらに河内川下流の水域まで活動の幅を広げようと思慮している時に、旭南公民館館長である逸見(へんみ)氏と知りあいます。逸見氏は、旭北地区と旭南地区に流れる河内川をよりきれいにする活動に深く共感。河内川を介した両地区が協力することに力を注ぎ、平成26年に旭北・旭南地区合同クリーン大作戦を実施しました。

Future 未来

川で繋がっている そこに住む人々は、河内川に流れる空気を日々味わい、流れる音に心を癒され、川を愛しました。この愛する川を、生まれてくる子ども達にも愛される川であるように、あじさいの会の活動を引き継いでいきたい。

“愛する河内川とともに、きれいな水と花にきれいな心が輝いていくことでしょう。

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下は、あじさいの会の活動の広がりを示すネットワークの図です。

長い年月の間には、地域のみならずさまざまな方々がつながって支えていることがわかります。まだまだ拡がっていくあじさいの会の活動を皆さんも応援してくださいね。

記事担当:M/O

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