2020年12月1日~6日にかけて、平塚駅前の元麻布ギャラリーにてアクリル画家の奧山真理子さんの個展が開かれていたので訪問しました。
「いのちの楽園」 奥山 真理子作品展 の作品から
色鮮やかで、その印象から楽しく感じられるかと思いきや、鑑賞していくと個展のテーマの「いのち」というものを感じさせるものが描かれており、鑑賞する人がいろいろな想像をして、作品から様々な物語を紡ぎ出すことができるように感じました。鑑賞していて飽きずに長い時間見入ってしまいました。その時は「この作品を描いたのは誰だろう?」、「作品のメッセージは何なんだ」と頭の中がグチャグチャにかき回されました。
1回の鑑賞では物足りなく、再度訪問しました。
ギャラリーで作家の奧山さんとお会いしましたが、私がイメージしていた「少し変わった人なんじゃないか?」(失礼ですいません)という予想とは大違いの印象でした。そこで、もっとお話が聴きたくなり取材させていただくことになりました。
奧山さんとアートとの出会い
茅ヶ崎生まれ、15歳で平塚に引っ越し、現在は平塚市中原に在住。
高浜高校に入学して、美術部に入部。
奧山さん 「自称、世界の画伯」とか自分で言う面白い先生がいて、毎年夏休みに裸婦デッサンがありました。カーテンも閉めてモデルさんが来て、先輩は冷静でしたが私たち1年生は圧倒されて描けませんでした。
先生からは「美術大学」への進学を薦められましたが、私にはそんなに高い志はなく、高校を卒業してからは、お勤めをしながら音楽、書道、お花、海外旅行など、いろいろなことに興味を持ち、美術から離れていました。」
40歳過ぎに再び絵を描こうと思って絵画教室アトリエOCT(以下OCT)に入り、若林 薫氏に師事。アクリル画を学ぶ。
奧山 真理子のホームページ http://www.octkun.com/mariko
奧山 真理子作品集「いのちの楽園」アクリル画―YouTube
奧山さん 「OCTに入るまでに書道、華道など色々習いましたが、自分で書を描いたり、お花を生けたりしても、先生に指導されて修正されると、「私の作品」ではなく「先生の作品」になってしまうんですね。生徒みんなが同じフォルムになってしまうんです。違和感がありました。
OCTさんでは、今までやったことの無い技法を教えてもらい、自分が描きたいものを自由な技法で描かせてくれたんです。例えばティッシュを貼って塗ってみるとか。だから、「次はどんな風にやってみよう」という意欲が湧いてきて楽しくなりました。私に合っていました。
お風呂に入っていて入浴剤がフワ~と広がるのをみて、「これで紙を漉いたら面白いんじゃないかなと思ってやってみるとか。日常の生活からヒントを貰うことはあります。好奇心は旺盛です。
色があるのはよいですね。色を選んでいる時は無心になれるのが楽しくて楽しくて、たまらない魅力です。
「ここを表現するのはこの色とこの色を混ぜてみたらどうだろうとか?この色にしたらどうだろう?」とか考えるのは楽しいですね。」
奧山さん 「私の絵を観た方から「どこから、こんな表現がでてきたの?どんな頭になってんの?」」なんて聞かれるんですが、私にもわからないところがあります。
私の作品は、独特だと思っているので万人に感じてもらわなくても、たった一人でも「良いな」と感じてくれればと思っています。「こんな絵でいいのかしら?」と迷うと前に進めなくなりますので。」
アクリル画の魅力
油絵具の匂いが強くて時間がかかるし、なじめなかった。アクリルは匂いも少ないし、早く乾くしそれでいて油絵具のような表現もできるのが良いです。
でもアクリルは作品を表現する一つの技法であってこだわっているわけではありません。
幼いころから絵を描くのが好きだったんですか?
奧山さん 「鮮明なのは、幼稚園のころに、フイルムを切って絵を描くのがあって、私はピンクのキノコを描いたらすごく褒められたのを覚えています。また、絵が好きだったからだとは思いますが、父が画板を買ってくれました。真っ赤な画板でした。
小学生の時に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を読んで絵を描いてみようという授業があって、不気味な絵を描いた写真が残っていますね。
綺麗なものをそのまま描くのは好きではなくて、その中(奥)にあるものを感じて表現したいというのは子どものときからあったようです。
例えば、血液を観たら、「中では、どんな細胞が動いているのだろう?」観たままではなく、自分の心の中から出てくるものを表現したいのです。」
個展のテーマが「いのちの楽園」というのには理由があるのですか?
奧山さん 「自分の作品には「いのちの誕生」をテーマにしているのが多いです。」
奧山さん 「30代後半から、「いのちの誕生」という神秘的で不思議で普遍的な営みに感情が揺さぶられて、40歳になってまた絵を描くようになってから、作品に想いを込めることが増えました。」
奧山さん 「この作品を観て、「綺麗なお花ねえ」と言う方もいますが、それはそれで鑑賞した方がどう感じてもらっても いいですね。」
奧山さん 「この作品は、自宅の玄関ですが、吹き抜けで私が出かける時に、上から母が良く声をかけてくれていたんです。母も高齢になってきたのでこの作品を観たら元気になってくれるのではないかと思いました。
母が私の一番のファンであり理解者であるので、見せたかったので個展を開いたんです。」
今後の夢
奧山さん 「外国の方が、私の作品をどう評価してくれるか知りたいですね。
自分で観て感じて驚いたものを描いていきたいし、死ぬまで絵を描いていたいです。」
ライターの独り言
年末に、また、個展を開催したいと意欲をみせてくれました。
奧山さんの「観て感じて驚いたことを描く」姿勢は共感します。鑑賞する側も「観て感じて驚きたい」と思います。楽しみにしています。ありがとうございました。
文責:清水浩三