「老犬介護セミナー」
〜人も愛犬も 最後まで幸せな毎日を〜
2月9日(日))午後、ひらつか市民活動センターにて開催しました。
これは、「ひらつか地域魅力ネット」の取材活動が発端となって、実現した企画です。
日本のペットの高齢化は、人の数倍の速さで進んでおり、1980年は3〜4歳だった犬の平均年齢が今では17~8歳。20歳越えも珍しくないという状況です。それに伴って、未だかつて経験したことのない、“老犬介護“が社会問題になってきています。
関心の高さを表すように、平塚市内や近隣市町のみならず、横浜、逗子、埼玉県和光市など遠方からもご来場いただき、43名にご参加いただきました。
■決して一人で抱え込まないで!
第1部は、「愛犬のシニア期にまつわるお金の話」と題して、堀内理恵さん(老犬ホームオレンジライフ湘南代表)にご登壇いただきました。
“老犬ホーム”というと、一般的にネガティブなイメージがつきまとい、飼い主もホームに預けることに後ろめたさを持ちがちです。でも、堀内さんは、まじめで、愛情深く、責任感がある人にほど、老犬ホームの存在が大事なんだと言います。
「愛犬のシニア期に向けて大切なのは、“将来のリスクを知ると”、“準備できることはしておくこと”、そして、“決して一人で抱え込まないこと“です。」と堀内さん。
しかし、専門サービスにはどうしてもお金がかかります。
「ライフスタイルにあわせて、必要な時に必要なだけ利用するというのが、現実的で無理がありません。」
その家ごとに将来を見据えたプランを考えるため、有益な情報をご紹介いただきました。
・長期預かり、デイケアなどの利用プランの紹介(「老犬ホームオレンジライフ湘南」)
・飼い主に万が一のことがあった時にペットを守るための保険の紹介(「ペットのお守り」)
・ペットへの相続について相談できる窓口(「ペット安心相談室」 ペット法務士・田代さとみさん)
また、情報を交換し、気持ちを共有して孤立を防ぐための有効なツールとして、SNSの活用を勧めます。
・Twitter: #秘密結社老犬倶楽部
・Facebook: 【シニア犬】高齢犬LOVE【老犬】グループ
最後に、犬の車椅子について、
「車椅子を使うと、ますます筋力が弱って歩けなくなると思っている方も多いのですが、車椅子を使って歩かせることによって筋力が鍛えられて、再び歩けるケースもあります。また、寝たきりになってからも、食事介助・排泄処理もやりやすいし、褥瘡の予防にもなります。」
これには、なるほど!と目からウロコの方も多かったようです。
・全国から発注のくる犬の車椅子専門店。「ポチの車いす」
オレンジライフ湘南ではいつでも無料相談を受け付けてくれます。
「適切な専門家やグッズを紹介したり、オムツ・車椅子などのお試しなどもできます。幸せなワンちゃんが増えることが何より嬉しいので、お気楽にご相談ください。」
ただ、日中は犬の世話で忙しいので、まずはメールやメッセージで連絡して欲しいそうです。
■「ごめんね」ではなく、「ありがとう」と言える介護を!
第2部は、横溝絵里さん(老犬介護士、Rocky’s Home 主催)に、「在宅介護のヒントと自宅で出来る予防法」というテーマでお話ししていただきました。
横溝さんは、“老犬の介護には、間違いも正解も一つもない!“と言います。
「思うようにやればいい。自分の家族にしかない介護ができれば、それでいい。その中で必要な時に、ホームを使ったり必要な人の手を借りたりできれば、もっと楽しいですよ。」
「愛犬に問題行動が見られた時、一時的にマイナス感情を抱くのは仕方ないが、それで終わりにしないでください。
トイレができなくなったり、水がうまく飲めなくなったり、今までてきたことができなくなった事にはそれぞれ理由がある。できなくなったら、腹筋を鍛えるとか、オムツをするとか、それにあった対策をすればいいだけのことです。
認知症も、なったから終わりではない。なったなりのケアをすればいいんです。解決法はあります。」
などなど、横溝さんの話を聞いていると、いろんな手段や選択肢があると気付かされ、老犬介護の負担感がだんだん軽くなっていきます。
そうやって様々な対策をする一方で、愛犬の死を受け入れる準備もして欲しいと言います。
「その時をいかに迎えるか、自分で考えておいてください。いろんな情報を集めながらも、それに振り回されず、最終決断はその犬のことを一番知っている“あなた”がするということを大事にして下さい。」
後半は、日常の生活の中に取り入れることのできる予防法や対処法を教えていただきました。
犬の体の作りを感じながらの説明には説得力がありました。中でも有効なのは、無理のない範囲で犬を自然の中に連れていくことだそうです。
「週末だけでも山や公園に連れて行って、いろんな足場を歩く、自然のにおいを嗅ぐ、鳥の声に耳をすます…など、犬らしい歩行や五感の使い方をさせてやって下さい。
人間と共存するために潰していた犬の本能に働きかけて、できなくなった事がまたできるようにしていく、できなくなることを増やさない。
そして何より、そうやって触れ合うことで、お互いの時間を濃くしていくことができます。」
「犬はどこが痛いか、何を思っているのか分からないから、介護は大変。でも大変だからこそ、“かわいい”を通り越して“愛おしく”なるんです。その期間は短い。だから後悔しないで欲しい。いろんなところと連携して、知識を得て、予防をしてください。
そして、最期は『ごめんね』ではなくて、『よく頑張ったね。ありがとう』と言えるようにしましょう。
そうするために私達もいる。いろんな手があります。窓口はいつでも空いているので、一人で悩まず、抱え込まず、相談にきてください。できるところから少しずつやって行きましょう。」
と、最後は暖かく力強い言葉で、セミナーを締めくくりました。
医療保険も公的サポートもない老犬介護は、時として想定をはるかに超える過酷なものになります。でも、今回教えてもらった知識や対策で、そのリスクを軽減できそうです。
そして何より、「いざという時には、いつでも相談できる場所がある」ということ、それだけで老犬介護への心の負担がぐっと軽くなります。
最期の時まで、愛犬との楽しい日々を過ごすためのヒントを、たくさんいただけたセミナーとなりました。
<質疑応答>
Q.介護・治療をどこまでやるべきか?
A.難しいが、その子を一番よく知っている飼い主が下した決断は、絶対間違っていないと信じてほしい。Facebookなどでいろんな犬の最期のあり方を知る事で、心構えもできてくる。個人的には、愛犬が耐え難く苦しんでいる時は決断すべきかと思う。
Q.水の場所がわからず、飲めなくなった。
A.サークルの中に入れる、水の置き場所を増やす、食べ物で水分を取る、などその犬の状態によって、いろんな方法がある。
Q.マッサージの仕方を教えてほしい。
A.いろんなやり方があるが、どれも間違いではない。基本は、自分がリラックスしてゆっくりと犬を撫でる事。「よくがんばったね〜」という気持ちでたくさん触ってやってください。それが脳を刺激し、ボケ防止にもなる。
Q.散歩はどのくらい?
A. 散歩は気分転換と思ってください。脳への刺激としては大事なので、歩きたければ歩けばいい。
訓練という意味では、移動するだけの30分より、筋肉を意識した運動10分の方が効果的。犬自身の体重の負荷だけで、ゆっくりした動きで鍛える方法をとって欲しい。
<参加者アンケートより>
・犬の介護について不安に思うばかりだったが、頼れる人に会えてホッとした。
・介護をネガティブに考えていたが、そうではないと気づき心が軽くなった。
・犬の介護士という仕事を初めて知りました。
・「どの道でも間違いではない」という言葉に救われました。
・愛犬を見送った人、現在介護中の人、いずれ介護となる人、全員に有意義なセミナーでした。
令和2年4月15日 文責:吉田邦子