3月の初めに中央公民館に行ったところ、こんな看板が入口にありました。

何だろう? G展? 私は先ず頭に浮かんだのが、野球の巨人軍に関する写真展じゃないかと想像しました。

正体は、平塚市にある元神奈川県立五領ヶ台高等学校の教員や職員の方たちで芸術(陶芸、絵画、写真など。)が趣味のグループの展覧会だったのです。五領ヶ台、芸術、グループの頭文字のGをとって「G展」としています。

五領ヶ台高等学校は、2009年に神奈川県立平塚湘風高等学校として再編され閉校しました。

今回で28回目の展示会を迎えたG展にはとてもユニークな方もいて「消火栓の蓋」「マンホールの蓋」などを研究している方もいます。

 

2階のギャラリーに上がり、展示会場に入ってみると、テーブルに座っていた人がこの方でした。

美術の先生だった沼田俊彦さん。この方の展示品に、とても引き込まれました。

「松ぼっくり」を集めて、それを水彩で描いた作品と松ぼっくりを密閉容器に入れて展示していたのです。名付けて「松ぼっくり探検隊」だそうです。

 

きっかけ

2000年のある日、当時小学生だった娘さんと東海大学の構内を散歩中に落ちていた松ぼっくりを見つけ拾いあつめました。その後も気になって出かけるたびに松の木があると松ぼっくりを探しました。よく観察するとそれぞれが大きさ、形、長さなどが違っていたり、松ぼっくりから感じる芸術家ならではの衝動にかられて、それ以降、引き込まれていきました。

 

いろいろな松ぼっくり

小田原の辻村植物園のストローブ松のもの。ゴミ箱に捨てられていたものを拾ってきたというもので、その熱意には驚かされます。まさに探検隊ですね。形がユニークで松ぼっくりのイメージが覆されます。

 

収集はエスカレートして、外国の松の松ぼっくりも集めだしました。

「ダイオウショウ」北米原産。松葉は三葉で40センチを超える。生け花などに使われる。

松も巨木で平塚商業高校の中庭に「大王松」が落としたものを採取。

 

「スペインのバルセロナの松ぼっくり」

 

「ジョージアの松ぼっくり」

ジョージアといっても、アメリカのジョージアではありません。東ヨーロッパにある国です。最近では大相撲で優勝した栃ノ心関の出身国で有名です。

 

絵に描くときの苦労

木から落ちた松ぼっくりは死んでしまったように思われますが、実はまだ生きるんだそうです。

水彩で絵を描き始めて、また時間をおいて続きを描こうとすると開いていた笠が閉じてしまっていたりするそうです。湿気を感じてしまうそうです。生きているんですね。だから形が微妙に違って絵が出来上がるときもあるそうです。

 

夢中になるものがあるという幸せ

松ぼっくりというものに、眼をつけたことにも驚き、それを水彩で精巧に描写してリアルに描く美術の先生ならではの才能にも驚き、「松ぼっくり探検隊」として文芸誌まで発行するという念の入り方。びっくりすることだらけです。こんな夢中になるものがあるなんて、なんて幸せなんだろうと思いました。

更に、探検隊の一員である、娘さんも成長して親子で個展を開催するまでになっています。

凄いですね。

 

ライター:清水浩三(湘南NPOサポートセンター)

Share