タウンニュースの記事で、この海岸の清掃作業をしている人の記事がありました。
米国ペンシルベニア州出身のゴルマン・タジさんです。日本の海岸なのに外国の方が清掃を?

興味がありどんなきっかけで始めたのかなどを、11月11日に取材させていただきました。

 

左が、ゴルマン・タジさん。

 

来日

2001年9月に英会話講師として来日。米国で英会話学校と面接して“平塚市”のスクールに決まって成田空港からすぐに平塚に来たそうです。以来、平塚に17年お住いです。
この取材は平塚駅南口のひらつか市民活動センターで行いましたが、タジさんが
「ここから、最初に入ったマンションが見えますよ。あれです」と指さしてくれました。
センターの窓から最初に住んだマンションが見えます。

中央の茶色い建物が、タジさんが最初に入居したマンションです。

夜に成田空港から平塚のマンションに着いたときは、既に夜で雨模様だったそうです。でも次の日の朝は雨があがり、部屋の西側には富士山が、南側には相模湾が見えたそうです。さっそく、海岸に行ってみたそうです。
現在のビーチパークのあたりです。

 

平塚の海岸の第一印象

「ええ、何これ?」と思ったそうです。「砂浜の色が茶色い」。

タジさん 小さい頃から海が大好きで、生まれ育ったところの海岸の砂が白かったので、茶色い砂浜は初めて見ました。でも、富士山や箱根を含めて山々に囲まれている相模湾はなかなかいい眺めでした。友人とよく平塚ビーチパークに行って、飲みながら話をしたり、夏には泳いだりもしました。今もしょっちゅう通っています。2001年もゴミは多少散らかっていましたが、今とそんなに違いは感じませんね。

 

ビーチクリーンのきっかけ

タジさん 平塚に移住してから自転車でいろいろなところに探検に出かけていましたけど、千石河岸海岸を発見したのは2009年ごろでした。
平塚の須賀の漁港にもよく行きましたが、漁港の先に小さな海岸があることを知りませんでした。その海岸が千石河岸海岸でした。行ってみたらゴミが沢山あって、何とかならないかと思いました。

その半年後に、フランス語を習いに藤沢の教室に通っていた時に、その教室で鵠沼海岸のビーチクリーンのイベントに参加しました。大勢の参加者がいて楽しそうだし、良いイベントだと思って千石河岸海岸でやりたいと思いました。どのようにやるかいろいろな人に聞いて「かながわ海岸美化財団」のことを知って連絡をして道具やゴミ袋などを送ってもらいました。

千石河岸海岸の様子

ビーチクリーンの初期の苦労

・参加者の少なさ

タジさん 1回目は10数人しか集まりませんでした。Facebookで呼びかけて、結構な人数が“いいね”をしてくれて賛同してくれたので、もっと集まるかと思ったのですけれど。

・集積場所までの遠さ

タジさん 「かながわ海岸美化財団」が回収はしてくれるのですが、指定された集積場所がビーチパークで、千石河岸海岸から往復で2.5kmくらいを4往復くらいしました。さすがに次からは、近くにしてもらいました。

・相模川と海の境界の中州のゴミ

タジさん 自転車で江ノ島に向かっていた時に、平塚から茅ヶ崎にかかる橋の上から河口の方を見たら、中州に大量のゴミがあるのを発見しました。そこで“緊急ビーチクリーン”ということで呼びかけて実施しました。それには30人くらいの方が参加してくれました。タイヤ、大量のペットボトルなど結構大変でした。大変なので次からは参加者が減りました。

タジさんは、それから、台風や大雨の後に現場を見に行って、ひどいと呼びかけてビーチクリーンをしています。
2009年から、約10年も続けておられるのは、すごいことです。

 

悲しいエピソード ゴミを集めても集めても、片付かない虚しさ

タジさん 参加者が少ないと朝から6、7時間かけても、片付きません。次の日もまた次の日もやっても終わり切らなくて、達成感がなくて虚しい、悔しいです。参加者が減るにつれて作業が更に大変になり、また参加者が減っていくという悪循環に陥る羽目に。

 

不思議なエピソード 役所の不思議な応対

タジさん ある時に、明らかに産業廃棄物が捨てられてあるのを発見しました。その傍に立て札があって【産業廃棄物を発見したら、連絡してください】と書かれていました。そこで電話をしました。

役所 「何で電話をしたんですか?」
タジさん 「立て札に、不法投棄を見つけたら連絡するようにと書いてあったからです。」
役所 「この電話番号を何で知ったのですか?」
タジさん 「立て札に番号が書いてあったから」
役所 「何を発見したのですか?」
タジさん 「不法投棄と思われる廃棄物です。」
役所 「それで、何をしてほしいのですか?」
????????
この会話で、何を感じるだろうか?

 

嬉しいエピソード ヒーロー現る

タジさん 千石河岸海岸でビーチクリーンをしていた時に、我々の作業をじっと観ていたおじさんがいました。最後の方におじさんはゴミ袋を持ってゴミを拾いはじめたのです。次の時も手伝ってくれました。次の時には、すでに集められたゴミの袋が並べられていて、おじさんに訊くと、1日1袋ずつ集めたそうです。おじさんは「あんたがた少ない人数でも、一生懸命沢山のゴミを集めてるのに感心した。」と言ってくれました。彼がはじめてですね、呼びかけた以外で参加してくれたのは。

 

ゴルマン・タジさんのビーチクリーンの精神は何処からきているのだろうか?

タジさん 生まれ育ったフイラデルフイアでも、郊外に住んでいて森が遊び場でした。木に登ったり、動物を探したり。誰も入ってこないので自然そのままでした。とても豊かな時間でした。
平塚に来ても湘南平などに探検に行きました。好奇心旺盛で人が入らないようなところにも入りました。でもそこには誰かが入り込んで捨てた産業廃棄物がありました。
海岸も同じ。子供のころ味わった自然のままの森や海岸であってほしい。だから、ゴミなどは何とかしたいと思うのです。

海岸に溜まるゴミも上流から流されてくるゴミです。
「ゴミは持ち帰る。」「ゴミは所定の場所に捨てる」「ゴミを見つけたら拾う」
一人一人が心がければきっと綺麗になるはずです。心がけましょう。

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取材のあとに現場に行ってみました。

タジさんのお話しを聴いて私は思いました。みなさん、外国の方が清掃しているという光景を想像してみてください。日本の、神奈川県の、平塚の海岸ですよ。悔しいし、恥ずかしくなりました。私も偉そうなことは言えません。住んでいる自治会の公園の清掃には参加していなかったですが、さすがにじっとしていられなくて、11月15日に千石河岸海岸に行ってみました。

タジさんに、この写真を送ったところ「まだ綺麗ですね」という返信がありました。でも、ペットボトルやプラスチックゴミを重点に集めたところ15分くらいでゴミ袋いっぱいになりました。
まだ、集積場所を決めていなかったのと、車も無いので2袋しか持てないので家まで持ち帰ってきました。
途中バスの運転手さんに「ゴミは他のお客さんに迷惑になるから」と断られてタクシーまで使いました。

すぐ「かながわ海岸美化財団」にメールして集積場所を決めてくれるようにいらいしました。
今は冬の時期で、天候が安定しているのでしょうが、夏の台風、大雨のときのことを想像すると恐怖です。
タジさんたちのご苦労が、身に染みてわかりました。

役所に圧力をかければ、一時は綺麗になるでしょう。大々的にキャンペーンをしても綺麗にはなるでしょう。でも「他人事」ではなく「自分事」だと感じないと未来につながらない。
是非、現場を観てほしい。そして何かを感じてほしい。感じたら行動に起こしてほしい。
だって、日本の、神奈川県の、平塚の森や海岸なんですから。

 

ライター:清水 浩三

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