引きこもりのことで悩んだら、すばるで一緒に話してみませんか?

そう話すのは、すばる代表の菊地さんです。柔和で穏やかな雰囲気を持つ菊地さんとは5~6年のお付き合いになります。

「自分の子育てを振り返ると反省ばかり、今のお母さん方は、相談できる場所がたくさんあってうらやましい、昔はそんな場はなかったですから…。私が子育てしている頃にもこのような場があったら、子どもも引きこもりにならなくて済んだのかもしれないと思うこともあります。しかし、そんな現在であってもまだまだ悩むお母さんたちはたくさんいらっしゃるんですよ。微力ではあるけれど、もう少しこの活動を続けていきたい。」と話す菊地さん。ご多忙の中、お時間をつくっていただき、じっくりとお話を伺いました。

 肩の力を抜いて話し合いましょう、と優しく語りかける代表の菊地さん。

活動のきっかけ

すばるは、平成23年平塚保健福祉事務所主催の引きこもりの家族教室で知り合った仲間が、自主的な勉強会を始めたことがきっかけで生まれました。今年で創立6年目、引きこもりの当事者家族がお互いに学び、交流を図り分かち合いを重ねる中で、悩みの中にいる人々にこのような場所があることを知ってもらうこと、共につながることによって希望を持ってもらうこと、を目的に活動しています。

 

設立当時は、子どもとはいえ既に成人を過ぎて引きこもる大人とどう向き合えばいいのか不安だらけだったというお母さんたち。特に初めての子育てで誰にも相談できず孤独との戦いの中で、自分の価値観を押し付けてしまったり、完璧を求めすぎて「ちゃんとしなきゃ」という気持ちが、いつしか子どもへの要求をエスカレートしてしまったり…。

子どもを育てたことのある人なら、誰でも一度はそのような経験を持っているのではないでしょうか?

 

学び合いの場をつくる

“家の中に「ねばならない」という空気が漂い始めると、だんだんと子どもも生きづらさを感じるようになる。その生きづらさがやがては不登校や引きこもりといった状況を招いてしまうこともあるんです”

これはすばるの設立間もない頃の勉強会で講師 NPO法人フリースペースたまりばの西野博之理事長が教えてくださったそうです。

“まず、親が楽になろう、コミュニケーションを学び、これまでの子どもとの付き合い方を考え直そう”

そんな講師の言葉がきっかけとなり勉強会を重ねるようになりました。

 

菊地さん

「引きこもりを理解しようと、アサーションやアサーティブネス(※注1)について学びました。コミュニケーションがうまくいくと、いろんなことがスムーズに話せるようになり、その結果、日常の会話から老後のこと、死後のことまで深い話ができるようになります。すばるでは、年に1つから2つのテーマを掲げ、これまで10回を超える講座、講演会を催してきました。

同じテーマでも、講師によって少し切り口が違うことも大いに勉強になりました。

変わったところでは、“穀物菜食で家族も元気に”というお料理講座の時には、不登校や引きこもる子どもさんたちに毎日の食事を作り続けて、実際に元気になった人をたくさん見て来られた講師による座学と調理実習をしましたが、他県の公的機関の方から同じ講座をしたいと電話をいただいたことも。

すばるではチラシ等で広報活動をして、少しでも多くの人に引きこもりの実態や対応について会員以外の方にも知っていただこうと活動しています。」

 

※注1 アサーション・アサーティブネス

アサーティブネスもしくはアサーション(英:Assertiveness、訳:自己表現・意見表明)は、自他を尊重した自己表現もしくは自己主張のことである。アサーティブネスは、行動療法にその起源を持ち、アサーション・トレーニングとの名称でトレーニングがおこなわれてきた。また、アサーティブなコミュニケーションとは、自分と相手の人権 (アサーティブ権) を尊重した上で、自分の意見や気持ちをその場に適切な言い方で表現することであるとされる。一般にもコミュニケーションの重要な技法であると考えられ、自己啓発書やビジネス書などでもしばしば取り上げられている。

アサーティブネスには、社会に効果的に適応するための社会技能としての側面と,人間には自己主張する権利があるという思想としての側面がある(出典wikipedia 2017/09/23 )

 

 

相手を変えようとするのではなく、まずは自分が変わろうとしない限り現状を変えることはできない。

 

しかし、自分を変える、ということは頭で考えているよりもたいへんです。お母さんたちは、勉強会で学んだことを自宅で試みるようになりました。

「子どもにも人格があり意思を持つ一人の人間なんだ、ということに改めて気づかされた。」

「子どもが自分の思う通りに動くなんて、とんでもなかった。」

勉強会では、そんな声が聞かれるようになり、

「生きていてくれていることが感謝、子どもに素直にありがとう、ごめんなさい、を伝えられるようになろう」と、子どもに対する接し方を変えていったそうです。

 

活動を継続することの大切さ

時間が経つうちに、子どもとの関係が良くなってきたという方が少しずつ出てくるようになりました。一日中部屋から一歩も出ず、誰とも口を聞かなかった息子が、返事をするようになった、部屋から出るようになった、食器を片づけてくれるようになった、等。その一つひとつがお母さんにとって、大きな喜びになったことは言うまでもありません。

 

活動を始めて3年経った頃からお母さんたちの顔つきが変わってきたといいます。

 

現在会員は15名。法人格を取得して活動してはどうか、と外部からの声もありますが、菊地さんは、会を大きくすることが目的じゃない。小さくてもいいからお互いに助け合い支え合うことができる、そんな温かいつながりを持てる会でありたいと話します。

 

活動は定例の勉強会の他に講演会も行う。

10月26日(木)には、「脳もこころもコンペイトウ=発達障がいワールド」第3回「当事者的視点」と周囲の人視点」という勉強会を開催します。

近年引きこもりは、親や子どもに発達障がいのある方にやや多いと言われるようになってきたとのこと。発達障がいの特性ってどんなものがあるの?そんな疑問や悩みを持つ方が定員を超えて申し込まれています。

「誰にも相談できない悩みを聞いてもらうだけで自分が楽になります。同じ経験を持つ者同士だから理解し合えることがあるんですよ。どうぞ気軽にいらしてください」と菊地さん。

[会場]ひらつか市民活動センター

[時間]14時~16時まで

[お問合せ先]0463-55-5971(菊地さんまで)

 連続3回講座の2回目。講師は3回とも渡辺真樹氏(アダージョ主宰 ゆくりあ代表)参加者は約30名(うち男性が3名ほどいらっしゃいました)
今回のテーマは「大人の発達障がいについて、ステキな点と困った点」
タイトルは「脳もこころもコンペイトウ-発達障がいワールド第2回-大人の発達障がい」

   “すばる”と”居場所かたつむり”の合同企画 主催:神奈川県立青少年センター

 

大人の発達障がいについて学ぶ参加者のみなさん。会場は満席、関心の深さが社会の課題を象徴するかのようです。

 

取材を通じて

「無理をせず肩ひじを張らず自然体でありのままの自分でいい」というメッセージが菊地さんの発する言葉の端々に散りばめられていました。個性を尊重することが重要といわれる一方で、均一な人間をつくろうとする教育や社会。レールを外れることに罪悪感や疎外感を持ち、生きづらさを感じている人も多いと聞きます。心が折れそうになった時、すばるの門をたたいてみてはいかがでしょう?

ライター:坂田みほ子

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