平塚市南金目にお住まいの柏木利雄さん(75)は湘南海岸石の収集家です。

何も興味も関心もないと石ころですが、よく観ると何とも言えない趣がある石があるそうです。

取材で柏木さんの自宅を訪問させていただきましたが、庭や部屋の押し入れには収集した石がぎっしりと納められていました。約1,000石程お持ちだそうです。

押し入れの中に置かれた石の数々

 

お庭に置かれた石の数々

 

たかが石、されど石

今回は湘南海岸石収集家の柏木さんにお話しを伺いました。

柏木さんが収集しているのは鑑賞用の“水石”です。手にしているのは月刊誌「愛石」。

 

水石とは? 

水石とは、室内で鑑賞する1個の自然石で、その石の形が、山や岩、滝などのような山水の景情を連想させるものをいいます。また、石の表面に現れている紋様や色彩などが、趣のある自然美を持った石も水石と呼びます。

水石は生活の中に自然の精粋をとりいれ、心を山水風物詩の世界に遊ばせ、心を豊かにしてくれる高尚優雅な趣味です。(伊那愛石会資料より)

水石の趣、形により分類されているそうです。

石を探しに行くときは、石の形がどんな分類なのかを頭に入れて探さないとお宝を見過ごしてしまうそうです。

これは、豊かな想像力を駆使するアートの世界です。

柏木さんお家の床の間に、見事な滝石がありました。

険しい岩山の谷間を流れ落ちる滝に見えます。この石は、和歌山県の古谷石と言います。

 

柏木さんの湘南海岸石収集に至るきっかけ

柏木さんは、20代前半に神奈川県の山岳会に入って、日本の谷川岳、穂高、槍ヶ岳などの登山を趣味にしていました。でも、結構お金がかかります。頻繁に行けなくなりましたが、柏木さんは行動的でじっとしていられず、結婚を機に山野草や盆栽などを始めたそうです。

今から、28年前に友人の家の玄関にあった、水石の見事さに魅了されて石を探しに旅に出ることになりました。新潟県の浦佐、そして阿賀野川、福島県、岩手県などに出かけました。旅費は山野草などを売ってえたお金をもとにしました。でもそうそう資金が続かず、遠いところにはいけない状況の時に、友人から「遠くに行かなくても、大磯や小田原の海岸に、いい石があるよ」と教えられ、以来湘南海岸を中心にお宝さがしをしています。

海岸石は、上流から流れてくる間に、角が取れて丸みを帯びて小型ながら何とも言えない趣があります。

 

平塚市民プラザで初の個展を開催

11月1日から4日間、市民プラザで柏木さんが収集した湘南海岸石の展示会が開催されました。約300人の方が訪れました。

展示された作品を紹介します。みなさんはどのように感じるでしょうか?

これらは、何に感じますか? かやぶき屋根の古民家を想像させられます。

 

ユニークな艶出し

石が黒く艶がありますよね。湘南海岸石は黒い石が多いそうです。そして艶がありますが、これは日頃の手入れが必要なんです。艶出しに使うクリームがなんと桃の花ハンドクリームだそうです。これを軍手に塗って石をなでるように磨くとダンダン艶がでて何とも言えない趣が引き立つようになるそうです。驚きました。

 

柏木さんのコレクションで、私が一番気にいったのがこちら。

母親が赤ん坊を抱いているような感じがする作品です。石の丸みのカーブがなんとも言えない深い愛情を醸し出していて癒されます。

こうしてみると、なるほどと思いますが、海岸に転がっていたらただの石ですね。よほど注意してみないといけないですね。お宝を見過ごしてしまいますね。

 

今回柏木さんのお話しを聴いて、趣味や夢中になるものがあることの幸せを学びました。

柏木さん、いつまでも少年のように夢中になってください。ありがとうございました。

 

ライター:清水浩三

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