クリスマスの夜、最後の願いのコンテストの優勝も逃し、生きる希望を無くしたネロは、雪の降りしきる中、おじいさんとパトラッシュと一緒に牛乳配達で歩いた道をアントワープの街へ歩きます。雪に足をとられながら、ようやく教会までたどり着きました。

夜も更けて人もいなくなった祭壇の前で、ネロは憧れのルーベンスの絵を眼にするのでした。夢にまで観たルーベンスの絵と出会えた喜びを胸に力尽きたネロは、祭壇の前に横たわってしまいます。後を追いかけてきたパトラッシュが近づきネロの傍に寄り添います。

「パトラッシュ、来てくれたんだね。ぼくはもう疲れた。そしてとても眠いんだ」

ネロは静かに眼を閉じました。パトラッシュも「クーン」と一泣きしてネロの傍らに横たわり眼を閉じました。

二人は、寒さや空腹など心配することのない、金物屋にムチでたたかれることもない、そしておじいさんのいるところへ召されていきました。

「フランダースの犬」のラストシーンです。

今回、取材させていただいた「働く犬を支援する会」の理事の栗田 直枝さんも小学校低学年のころに読んだこの本に影響を受けたといいます。栗田さんにお話を伺いました。

 

「働く犬を支援する会」を立ち上げたきっかけ

1995年から、盲導犬のパピーウォーカーを行っていました。

*パピーウオーカー=盲導犬に育てるための犬を生後2か月から1歳になるまで里親として世話する人。Puppyは仔犬のこと。

社会も盲導犬の必要性に目を向け始めたころでしたが、訓練して全部の犬が盲導犬として働けるわけではなく、訓練途中で資質が合わず戻されたり、また、盲導犬として10年働いて引退した犬のことには、まだ世間の光はあたりませんでした。

そこで盲導犬も含め、補助犬のケアをしようと考えました。また、全国に11か所ある訓練施設のどこからでも受け入れたいと思って、2003年にNPO「働く犬を支援する会」をたちあげました。

2008年大磯町に「はた犬ケアハウス」を作り、平塚市の豊田から事務所を移し、活動を続けています。

 

身体障害者補助犬

盲導犬…視覚に障害のある方の補助。交差点、段差、階段、を知らせ、障害物をよける。

介助犬…手足に障害のある方の補助。指示した物や落とした物をとってくるなどの行為。

聴導犬…聴覚に障害のある方の補助。チャイム、電話、など生活の中の音や警報を教える。

理事の栗田 直枝さんと介助犬 ペリー。ラブラドールレトリーバー オス・6歳

 

主な活動

・補助犬を引退した犬、一般犬(高齢犬)でもケアや看取り

・犬を伴って訪問し講話やデモンストレーション。

学校から「福祉総合学習」などの依頼があると訪問して身体障害者補助犬法や盲導犬の一生、補助犬への理解、使用者への関わり方を啓蒙している。

・災害時にペットは同行避難、そのための自助が重要なのでその啓蒙。

 

 

犬の看取りの時の心境  

ありがとう」という言葉に尽きます。

『補助犬は使用者と家の中で一緒に生活し、定期的に健康診断を受け、健康管理と行動管理がされます。障害者の日常生活をサポートしてくれたわけですから、私からは「お疲れ様」「ありがとう」です。

犬は社会性が強いですし、一緒にいると「心が通い合います」。ナビなど機械がいくら発達しても、補助犬を選択される使用者は無くならないと思います。』と栗田さん。

 

今までで印象的だった出来事

1.盲導犬として10年働いて引退して戻ってくるのですが、覚えていてくれること。パピーウオーカーのころに散歩した道も忘れずにいてくれて、喜んでくれることが嬉しかったです。

2.命尽きるタイミングを計る能力があるのではないかと思います。早朝看取りが近いと感じていて、「学校に行くから帰ってくるまで頑張るんだよ」と声をかけて撫でていたら、呼吸が変わり息を引き取りました。心配しなくていいよもう逝くから、とでも言う様にです。

 

補助犬のオン(仕事中)とオフ

ハーネスをつけているときは仕事をしている時です。ハーネスを外したらお仕事の終わりです。

仕事をしている時は、写真のようなハーネスをつけています。盲導犬の身分証明書もついています。

電車の中や伏せて待機している盲導犬は休んでいるわけではありません。仕事中なので「可愛い」と思って近づいて触ったり声を掛けたりしないでくださいね。

家に帰ってきてハーネスをはずしたら、普通のペットです。

介助犬、聴導犬はハーネスはしませんが、代わりにマントを装着します。その時はお仕事中だと思ってください。

 

平塚市も含め補助犬同伴への理解を。

2003年に施行された「身体障害者補助犬法」で、レストランなどへの補助犬同伴を拒否しないように定めているが、入店を拒否される場合がまだあるそうで、理解が進むことを願っています。

災害時におけるペットの処置

「働く犬を支援する会」では、災害時のペットの処置についても啓蒙しています。

第一に「ペットも一緒に避難する」。

人も動物も被災することで大きなストレスを受けています、環境が変わる避難所でストレスを低減できるように、犬は日頃からクレート(ハウス)に入る、呼び戻しができるようにしておきましょう。

 

写真:動物愛護推進員深谷氏提供

犬と仲良くなりましょう

・可愛い犬がいても、慌てて近づくと噛まれることがあるので気をつけましょう。飼い主さんに「撫でたり、触ったりしてもいいですか?」と聞いてから近づいてください。

・犬に自己紹介するときは、グーを鼻先に出します。犬に限らず動物は自分に優しくしてくれる人か、そうでないかを動物的な勘で判断するような気がします、愛情をもって接してくださいね。

 

ペリー君が取材中に、すり寄ってきてくれてとても癒されました。栗田さん、ご協力ありがとうございました。

 

ライターの独り言

私の家でもミニチュアダックスと生活しています。とても愛しいですね。「心が通い合う」「分かり合える」気持ちが解る気がしました。人が一番わからないな(笑)。

清水浩三