毎年のようにノーベル賞を受賞する日本人がいる一方で、子どもたちの科学離れが問題視されている今日この頃。実際のところ状況はどんなものなのか、特定非営利活動法人 でぃ工房の代表を務める相原隆文さんにお話しを伺いました。

でぃ工房は、子どもの科学離れを少なくするため、子ども、そして子どもを支援する大人の皆さんへの科学支援を目的に活動しています。

相原さんは工業高校の教師時代から、子どもたちに向けた工作体験などのイベントの立案・実施を、お仕事の一環でしていたそうです。

「50代中半から、仕事で職場近くの小学校に、“電気研究部”というクラブの生徒と展示や工作体験教室に伺っていました。

その時の子ども達の喜ぶ姿を見て、また製作過程での子ども達の素晴らしい発想が、これまた大人の参考になり、病みつきになってしまいました。」と仰る相原さん。

そこで、教師の立場で科学支援事業に取り組めるような方法を探した結果、NPO法人としてなら教育者でも問題がないことがわかり、2014年9月に「でぃ工房」を立ち上げました。現在会員は10名で、科学に関する展示や体験教室を実施しています。

今年4月に完全退職を迎えた相原さんは、自由な時間が増えたので自宅の敷地にある6畳くらいの実験工房にこもって日々を送っているとのことです。

「退職して働いていないことに罪悪感があるんです。“仕事が無い”ことに慣れていないんですね。職業欄“無職”ですよ。でも何かやっていないと・・・死んじゃうから(笑)。今は毎日が自由研究です。」元教師で電気が専門と聞いて、もっと畏まった方かと思っていたら、とても気さくでお話しするのが楽しい方でした。

 

でぃ工房の名前に隠されたヒミツ

「でぃ工房」は覚えやすい名称であると同時に何だろう?と思わせる不思議な魅力があります。どうやってこの名前になったのか、相原さんに聞いてみました。

「14~5年前、職場で12名の部屋でした。3名で一列、4列で、それらを順番にA列~D列とネーミングし、いろいろな仕事分担を列単位で行っていました。私の席はD列、向かい合わせのC列の若い女子職員が、印刷室で大量に廃棄している大筒(活動センターでも輪転機マスターの芯を捨てると思います)を持ってきて、何かに使いたいとの提案があり、

相原さん・・『筒と言えば万華鏡・・しかも中で傾きによってLEDを光らせる・・』を提案、

女子職員、自分で製作すると思いきや!!

C列女子職員・・『じゃ~、納期は明日ね!! 遅れたらD列仕事増えるから!!』

相原さん・・『作品気に入ってくれたら、D列のお仕事と一緒に作品もあげる!!』

こんなきっかけと乗りで、『あれはどうなの?!』、『こんなの作れない?!』

・・・そのうちに『D列工房だね!!』が『D工房(でー工房)』になり、少し洒落て『でぃ工房』になりました。」

 

「科学離れ」から「科学場慣れ」へ

子どもの科学離れが多い原因について、相原さんはどのように考えているかをお聞かせください

「時代でしょうか・・、昔は遊ぶ物が無かったので、身の回りに有る物を工夫して・・という時代でした。

今や・・、便利な物や、素晴らしい高度な玩具が安価に手に入ります。工夫しなくても単純に結果が出てしまいます。

ゲーム機や携帯がダメと言うわけでもないのですが、時間配分が良くないですよね!!

そのような環境で育ってきた大人が、親に・・教育者に・・、良い循環ではないと思います。

もう少し、「何故」や「どうして」を、失敗しても多く経験して欲しいです。

このことは奥が深いです、では高校の先生は・・中学の先生は・・小学校の先生は・・保護者は・・となってしまいます・・。」

でぃ工房は、神奈川県青少年科学体験活動推進協議会による「子どもサイエンスフェスティバル」や、箱根町湯本小学校の「チャレンジクラブ」などで活動しています。いろんなことを体験しながら学べる企画で子どもたちも親も楽しく参加できる内容です。例えば手作りの小田急ロマンスカーの運転体験が未就学の子どもたちに大人気。他にも紙コップを使って自分で作った力士で相撲大会や、牛乳パックを使ってパンを焼く「科学パティシエ」なんてものもあります。

順番待ちの行列ができる人気のロマンスカーの運転体験

紙コップの相撲の説明をする相原さん

いざ勝負!うまくできるかな

 

「低学年の子どもたちには安全なハサミの使い方から教えるんですよ。その次にはグルーガンの使い方をね。」と相原さん。今の子どもたちはナイフで鉛筆が削れない話は聞いたことがありましたが、ハサミの使い方も指導する時代になっているとは驚きでした。

「商業施設のカルチャースクールでも化学工作教室を実施していますが、高学年の子達が来るかと思いきや、殆ど低学年の子達だったんです。親御さんの反応も見ながらやっています。」思わぬ事態に最初は戸惑ったとのお話しでしたが、大手の企業や学習塾の1年で内容がローテーションする実験教室との差別化をはかり、こじんまりと毎回違うことをやっているそうです。

大きなイベントから小さな工作教室まで、様々な科学と触れ合う「場」で、でぃ工房が活躍していることがわかりました。

 

科学と音楽との関わり

実は相原さん、三味線の演奏もされ、幼稚園児から80代の方まで、お弟子さんが12人もいる藤本流三味線のお師匠さんでもあります。科学と三味線とは、分野が全く違って驚きです。ところがこの異分野の二つを同時にやったことがあるそうです。「湯本小学校でのチャレンジクラブで、バケツとガムテープで太鼓を作る工作教室をやった時に“たまたま”三味線を持ってきているので作った太鼓と音合わせをしてみましょう、と言うことで演奏会をしたんですよ。」何故“たまたま”なのかを詳しくお聞きすると、「NPO法人の定款に“音楽”の項目を入れなかったのは失敗だったなぁ。」とのお答えが。定款に書かれていない活動はできないので、三味線の出番は“たまたま”になってしまうんですね。それでも知恵を絞って融合させてしまう発想力は素晴らしいです。こうした“ひらめき”は科学の実験や工作と通じるところがあるのではないでしょうか。

 

次に何を仕掛けようか

最後に今後はどんな活動を考えているのかお尋ねしたところ、最近全国各地で耳にするようになった「空き家プロジェクト」のような形で科学工作体験工房ができないか模索しているそうです。実現すれば、でぃ工房さんが掲げる「科学場慣れ」のための“場”となることでしょう。

サイエンスフェスティバルやチャレンジクラブのようなイベント以外でも、いつでも科学を身近に楽しく体験できる場があれば、子どもたちの科学離れに歯止めがかかり、更には平塚市からノーベル賞受賞者が出てくる日が来るかもしれません。

 

取材を終えて

実は相原さん、学校の先生としての経歴や子ども向けの工作教室で科学の楽しさを教えるだけではなく、電気の仕組みについてやロボット工作の入門書など、7冊の著書の執筆もなさっています。学生時代に相原さんのようなステキな先生に出会えていたら、私ももう少し理科や科学が好きな子どもになっていたんじゃないかなぁ、と感じました。(取材:ウジイエ)

 

でぃ工房への「工作体験」「展示品などの製作」と「技術協力」に関するお問い合せは、まずは電話かメールで相原さんにご相談ください。

連絡先:特定非営利活動法人 でぃ工房 代表 相原隆文さん

090-7903-3979

rc_994_42_@md.scn-net.ne.jp

 

追記:クリスマスシーズンが近づいてきたある日、相原さんからとっても素敵なプレゼントをいただきました!手作りのクリスマスツリーです。ツリーと一緒に「50秒の奇蹟」と題した冊子が添えられていました。それを読むと今年で手作りツリーは8年目だそうです。相原さんの工房に貯まった部品を使って毎年少しずつ進化させながら作っていることや、製作の仕上げに飾り付けを個々でできるように解説も載っています。

いただいたツリーとオーナメント2つ、冊子のセット。何故「50秒の奇蹟」なのか?それはツリーの右下部分のスイッチを押すと、中に埋め込まれたLEDが50秒間チカチカ点灯する仕掛けになっているからです!クリスマス気分も更にアップです!

赤と黄色のライトがついているのが分かりますか?

科学を応用すると、こんなに可愛らしいものまで作れちゃうんですね!

相原さん、ありがとうございました。