NPO法人大磯ガイド協会主催の企画ツアー「大磯ゆかりの女性たち」が、6月8日開催された。梅雨の晴れ間の青空のもと、180人の参加者が、日本画家の堀文子を始めとする大磯で活躍した8人の女性たちの足跡をたどった。

 

大磯駅前に立つ堀文子揮毫の「湘南発祥の碑」

ガイドの個性が光るツアー

ツアーは、1人または2人のガイドと8人のゲストが1グループとなり、徒歩でスポットを巡って行く。私は、入会して3年目の生方有紀子さん(50代)と同2年目の川﨑裕さん(40代)が率いるグループに同行した。

退職後にガイドを始めたメンバーが多い同協会においては若手の二人が、ベテランガイドと組まずにツアーを仕切るのはこの日が初めて。先輩たちに「ガンバレ!」と声をかけられ、二人はちょっとはにかんだ顔を見せた。

初めての企画ガイドに挑む生方さんと河﨑さん

 

先輩ガイドたちに見送られて、出発!

今回のツアーは、約3時間半に及ぶコースで見どころも多い。新人の二人は分担して各スポットの解説をしていくが、そのやり方は対照的だ。生方さんは、女性達の生きていた時代に想いを馳せ、まるで彼女たちが今ここに生きているかのように活き活きと語る。一方川﨑さんは、当時を偲ばせる写真を示しながら、新島八重が夫の襄の最期を看取った様子などをわかりやすく説明していく。最初は緊張気味の二人だったがその不安はどこへやら、それぞれの個性が際立つ楽しいツアーとなった。

2,000人の孤児を養育した澤田美喜について語る生方さん

 

「新島襄終焉の碑」の場所にあった百足屋旅館の写真を掲げる川﨑さん

充実した教育システム

ツアー終了後、お世話になった二人と、同協会の副会長で新人教育を担当している杉本純子さんに話を聞いた。

ガイド歴10年のベテラン、教育研修部の杉本さん

生方さんは、県外の御殿場市からガイド協会に通う。大磯には先祖代々のお墓があり、小さい頃から何度も訪れていたという。「とても愛着があるのに、断片的にしか知らない大磯という町を、正しく知りたい」という思いから、大磯ガイド協会の門を叩いた。一方、大磯で生まれ育った川﨑さんは、仕事の関係で町を離れていたが、3年前母親が一人暮らしになったのを機に実家に戻った。ガイドを始めたきっかけを、「小さい頃から慣れ親しんだ大磯の歴史を、ガイドをすることでゆっくりと学んでいきたいと思った」と話す。
そんな二人が、「こんなに大変だとは思わなかった!」と口を揃えた。
こうした新人をゼロから育てる教育システムが、大磯ガイド協会にはある。
その一つが、「先輩たちが積み上げてきたものを新人用に作り直した」という分厚いテキストだ。新人ガイドたちは、このテキストを読み込んで、大磯町の歴史や風俗を学んでいく。
実地訓練としては、新人たちはまず旧吉田邸での研修から始める。「旧吉田邸は、話す内容も場所も範囲が決まっているから、格好の研修場所」と杉本さんは言う。新人たちは、先輩たちを客に見立てて、何度も旧吉田邸ガイドのロールプレイングを重ね、半年かけてガイドの基本をみっちり叩き込まれる。
企画ガイドにおいては、入会後少なくとも1年間は旗持ちとしてグループの最後尾につき、先輩ガイドの技を“盗む”。
そうして研修を積んだ見習いガイドたちは、満を持して町歩きツアーのロールプレイングにのぞむ。先輩ガイドを前にして、「とても緊張する瞬間」と二人は口を揃えるが、生方さんは「きちんとした教材と素晴らしい講師がいてくれたおかげで、大磯に住んだことのない私でもやっていけそうだなって感じました」と話す。

 

魅力的なツアーのために

新人に限らず、メンバーたちの勉強量は膨大だ。月1回のペースで行われる企画ガイド。その企画担当者が数ヶ月かけて資料をまとめる。本番1週間前には、その資料を使った座学と実際にルートを歩くリハーサルが行われる。今回のツアーに向けて、川﨑さんは、資料を縮小コピーして東京までの通勤電車で読み込んだ。生方さんは、資料を小さなメモ帳にまとめ、当日お守りとしてポケットに忍ばせた。更に1回のリハーサルだけでは心配で、個人的に再度コースを回ったという。

小さな文字でびっしりと書き込まれた生方さんのメモ帳

生方さんは、「私はまだツアー内容を覚えるだけで精一杯。でも先輩方は前日に、自主的にコース上のゴミを拾ったり、訪れる墓所に花を供えたりしてくださってるんですよ」と、おもてなしの心を尽くす先輩ガイドたちに尊敬の念を示す。

若手の二人が、仕事を持ちながらもガイドを続けられる原動力は、「大磯には、まだこんな知らないことがあったのか!」という好奇心と、ツアー参加者の「大磯って素敵なところね」という言葉だそうだ。「仕事が忙しくて時間に追われがちな時でも、こう言われると嬉しくて疲れも吹っ飛ぶ」と生方さん。

そんな二人に、今後の目標を聞いてみた。民俗学に興味があるという生方さんは、「もっと勉強して、いつか左義長ツアーを全部一人でガイドしてみたい」と目を輝かせる。川﨑さんは、「来年度は明治記念大磯庭園や“みなとオアシス”がオープンするなど、変わりつつある大磯で、自分がガイドとしてどう関わっていけるかが楽しみ」と、未来を見据える。

先輩たちの積み上げてきたものが若い力に引き継がれ、大磯ガイドたちは大磯をより魅力的な町として盛り立てていく。

 

取材日:2019年6月8日

ライター:吉田邦子

※この記事は当法人が開催した「WEBライター養成講座」(全3回/5月29日・6月12日・6月19日)の受講生が、受講中に取材して記事にしたものです。

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