「最近はまっていることは何かな?」

「緑黄色社会が好きです」

「野菜が好きなんだね」

「違います。緑黄色社会です。好きなグループの名前です。」

「???」   

今回の取材は世代ギャップを感じる高校生への取材です。でもそんな高校生が取り組んでいるのが日本伝統の芸能の人形浄瑠璃「文楽」です。数少ない「文楽」の部活がある神奈川県立高浜高校(以下高浜高校)を訪問しました。

高浜高校は、昭和9年(1934年)に平塚市立実科高等女学校として開校。

      昭和34年((1959年)に神奈川県立高浜高等学校に改称。

      平成5年から男子生徒も受け入れ、共学校となりました。

高浜高校のある平塚南部の港地区は歴史ある地域で、教育方針にも「福祉・ボランティアの高浜」と入れるほど

地域との関わりを大切にしている学校です。

高浜高校正門

 

高浜高校文楽部のはじまり

高浜高校文楽部は、全国でも珍しい、「一人遣い」の文楽を継承する部活です。昭和47年(1972年)に平塚市からの派遣で、神奈川県で乙女文楽を指導した桐竹智恵子氏の指導により始まりました。当時は児童文化部の中の乙女文楽班として活動、その後同好会として独立。昭和52年に「文楽部」に昇格し現在に至っています。卒業生が「湘南座」の結成に加わり人形浄瑠璃芝居の継承と育成に熱心に活動されています。高浜高校の「文楽部」の指導もされています。

平塚市の「民俗芸能まつり」や、地元の老人ホームを訪問して披露しています。ホームの方たちはとても喜んでくださるそうです。

 

 

湘南座の指導風景

取材当日はお稽古日で、「湘南座」の方が丁度指導されていました。

生徒が「寿式二人三番叟(ことぶきしきににんさんばそう)」を稽古していました。毎週指導されている湘南座の城田さんと中村さんのお話を伺いました。

指導されて、生徒の印象は?

城田さん:「とても前向きで熱心です。「ここはこうしたらいいよ」と言うと、お互いに相談してちゃんと出来るようになります。物おじせず頼もしいです。」

中村さん:「真面目に取り組んでいますね。古典芸能をやるというので今時の高校生とは違う感じです。」

生徒を指導する「湘南座」の中央が城田さん、右が中村さん。

 

 

部員の紹介

 現在の部員は4名。

保坂 妃南(ほさか ひな)さん (第47代部長、2年)

 好きな教科は数学と英語です。     

清水 那月(しみず なつき)さん (2年)

 好きな教科は音楽。吹奏楽の経験あり。 

池嶋 悠 (いけしま ゆう)さん (2年)

 好きな教科は歴史。音楽を聴くのが好き。「緑黄色社会」というグループのファン。

川崎 咲来(かわさき さくら)さん (2年)

 好きな教科は国語。「ヨルシカ」というグループのファン。

写真右から、清水さん、部長の保坂さん、池嶋さん、顧問の柏木先生。

 

高浜高校はどんな感じの高校ですか?

保坂さん:「授業とか行事など、のんびりしている感じの高校です。」

池嶋さん:「授業などにはしっかり取り組んでいると思います。」

清水さん:「地域とのつながりがあり、温かみのある高校です。」

学年は6クラス。1クラス40名くらい。以前は女子高なのでまだ女子の多い学校です。

柏木先生:「そんな感じです。隣の太洋中学校からも文楽部を見学に来ます。アットホームな高校です。」

 

文楽部に入った動機は? 最初の印象は? 入ってみてどうですか?

池嶋さん:「1年のときは部活に入ってなくて、2年の秋に保坂部長に『部員が少ないので良かったら入ってみない?』と誘われて入りました。文楽というものは知らなかったです。静かな印象があります。日本の文化が学べるのではないかと思いました。未だ人形をつけて踊ったことがないんです。文化だけでなく礼儀なども学べて良かったと思っています。」

清水さん:「別なクラブに入っていましたが、そのクラブの先輩は文楽部にも入っていて誘われて見学に行ったときにとても良くしてもらえたので入部しました。母親の学校に三人遣いの人形浄瑠璃の部活があって話を聴いてはいましたが観るのは初めてで未知の世界だなという印象でした。」

保坂さん:「親から高浜高校に文楽部があるとは聞いていました。部活を見学に回った時に先輩が優しくしてくれたので入部しました。人形がリアルでビックリしました。人形と一緒に踊っている感じが楽しいです。」

 

文楽の魅力は何だと思いますか?

清水さん:「演目のジャンルの広さだと思います。一人遣いもあるし三人遣いもあるし、「三番叟」は五穀豊穣を願うお祝いの舞ですし、「阿波の鳴門」は親子愛、ほかにも男女の恋愛の話とか幅が広いので何を観ても面白いと思います。同じ演目でも人形を操る人が替わると違ってくるのが魅力です。」

保坂さん:「『阿波の鳴門』などの親子が話している様子などで、昔の日本の生活の様子が、人形の動きによって伝わってくるのが魅力だと思います。」

池嶋さん:「演目を演出するための舞台のセットなどの工夫も魅力的です。」

写真左から、保坂さん、池嶋さん、清水さん

大変だったことはなんですか?

保坂さん:「『三番叟』は2人で踊りますが、合わせないといけないのでタイミングがむずかしいです。」

池嶋さん:「後見は足音を立ててはいけないし、声も出せないし。2人のタイミングをあわせるのがむずかしいです。本番で成果が出たときは嬉しかったです。」

柏木先生:「椅子に座る場面があるのですが、人形遣いは足元を見たり後ろを向いたりできないので、とても怖いことなんです。遣い手と後見の呼吸や信頼関係が大切になる、難しい動作です。」

清水さん:「人形をつけない時とつけた時の動きが違ってくるので対応するのが難しいですね。」

 

かしら”、手、足の動きで大変なのはどの部分ですか?

清水さん:「手の動きですね。人形をつけると自分の手の動きと人形の手の動きと感覚が違うので合わせるのが難しいです。初めて人形をつけた時、ズッシリと感じたのを覚えています。」

かしらと足は遣い手の身体の動きとリンクしているけれど、手はリンクしないので難しいようです。また、人形は約10kgあるそうです。遣い手の身体に道具を使って固定して、“かしら”、手、足を動かすのは大変で、筋肉痛になるそうです。

伝統の民俗芸能を継承していくことについてどう思われていますか?

保坂さん:「昔の人が創り出したものですが、時代は変わっていくけれど昔のことを残していくことは大切なことだと思います。」

清水さん:「伝統芸能を伝えていくことによって新しいものを知ったり、昔のひとが大切にしてきたものは今で も大切なものだから守っていくことは重要だと思います。」

池嶋さん:「昔のことは歴史や社会の授業で読んだり聴いたりするけれども、文楽の人形の動きなどでより理解されやすくなると思います。」

 

文楽部ならではの大切にしていること

・影送りといって、 稽古を指導してくれたお師匠さんを見送るときに、お師匠さんの影が見えなくなるまで立ち去らず見続けること。感謝、敬意を表すこと。

・人形の“かしら”(顔の部分)の入っている箱の上には、紙1枚も載せてはいけない。それだけ神聖なものだということ。

将来、どんなことをしたいですか?

池嶋さん:「音楽に関係した仕事をしたいです。ライブなどの音楽イベントのスタッフやプロデユースをしたいです。」

保坂さん:「保育士、幼稚園か小学校の先生になりたいです。子どもは好きです。」

清水さん:「図書館司書になりたいです。小学生の時に図書館体験があって面白かったので。本も読むのも書くのも好きです。」

 

顧問の先生から

部活動から学んでほしいものは何ですか?

柏木先生:「和気あいあいと活動する中で、部員同士の思いやりや伝統を継承していく楽しさをたくさん経験してほしいと思っています。のびのびと明るい雰囲気は、先輩たちから受け継いだ部の宝です。日々活動できることへの感謝、晴れ舞台を踏める喜び、後見として支える責任感など、多くを学んでくれたらこれより嬉しいことはありません。」

 

切なる願い「部員募集」

保坂さん:「部員が少ないので、入部してくれる人が欲しいです。」

柏木先生:「昨年は部員が3年生と1年生でした。3年生が卒業してしまって、現在は昨年の1年生が2年生になった部員4名です。新入部員を勧誘しなければならないのですが、新型コロナ感染の影響で休校や部活自粛、発表の機会が得られないという厳しい状況になりました。「文楽」は他のクラブと違い、知らない人が多いので、知ってもらわないと始まりません。その機会がないのが響いています。部員増強が最大の課題です。」

 

ライターの独り言

2021年1月9日には、地元の新年会に招かれて「寿式二人三番叟」を披露するそうですね。きっとみなさんに喜んでもらえると思います。学校の玄関に飾られていた「一期一会」の扁額通り、素敵な皆様と出会った時間でした。ありがとうございました。

ライター:清水浩三

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