平塚駅の東側(茅ヶ崎側)の改札口を抜けて左手に進み階段を降りると、地下に通じる階段があります。

その階段の一番下まで行き、振り返ると階段に見事な絵が描かれています。

階段のラッピングアート

 

そして、地下道を見渡すと両側の壁にいろいろな作品がありました。

「平塚地下道ミュージアム」として、2017年に開設され、平塚ゆかりのアーティストが制作した作品が飾られています。

ここに飾られているこちらの作品の作者が、今回取材させていただいた1761studioの代表の岩崎 夏子さんの作品です。

岩崎夏子「豊かな世界2」

 

「1761スタジオ」オープンのきっかけ

岩崎さん「美術大学を卒業してから、制作・発表の場所を探していました。この場所がテナントを募集していたんです。平塚に生まれて育って、袖ヶ浜や八重咲町などの雰囲気が好きで、いいなと思っていました。1人で借りるのは大変だけどシュアすれば借りられると思い、仲間を募ったら集まってくれてオープンすることができました。」

 

“1761”とは、袖ヶ浜17-61の住所の表示です。

1761studioは誰もが自由に表現することができる拠点として誕生した、若手アーティストの集うシュアアトリエです。2015年にオープンしました。

袖ヶ浜や八重咲町の好きな理由は?

岩崎さん「開放感があってゆったりした感じがあります。海も近いし、道路も広い。おしゃれなお店が多いです。」

 

岩崎夏子さん(1761studioにて)

 

アートとの出会い

岩崎さん「4歳から小学校5年生まで、大磯のアートスクールに通っていました。小さい頃から1人で没頭するのが好きな子でした。水泳や、ピアノなどの習い事もしたのですが続きませんでした。アートだけは続きました。親に平塚市美術館によく連れて行かれました。その影響もあったと思います。」

小学校5年から、友達の誘いもあってバスケットに夢中になり、中学校の部活もバスケットをしました。

岩崎さん「でも、『バスケットを続けても何にもならないな』と感じてしまいました。肉体的な面より内面を鍛えた方が価値あるような気がして、アートを目指しました。」

 

まちなか美術館~地下道ミュージアムのプロジェクトに参加

2016年6月~2017年1月まで、明石町のマンション建設工事がありました。工事現場は白いフエンスで囲まれます。商店街ということもあり長い間殺風景ではさみしいので、商店会が何とかしようと「工事中の白い壁」を「にぎやかに彩りある壁」になるよう、「平塚まちなか美術館」~公園通り新仲商店街明石町ビル工事壁画アートプロジェクト~を発足しました。

スタジオクーカさんに依頼されたものです。

クーカの北沢桃子さんが、1761studioの岩崎さんらに声をかけ7人の仲間と作品を完成しました。

岩崎さん「クーカの北沢桃子さんからの依頼で『クーカのアーティストだけではなく、せっかくなので平塚ゆかりのアーティストにも参加してもらいたい』というものでした。街がアートで彩られ、豊かになるならいいなと思って仲間に声を掛けたら『いいんじゃない』『やってみよう』ということになりました。」

まちなか美術館が話題になり、平塚市がバックアップして、駅北口の地下道の魅力向上のため、アートで地下道を楽しく、美しく彩る「平塚地下道ミュージアム」に繋がっていきました。

地下道ミュージアムは、2017年と2018年の2期にかけて開設されました。

岩崎 夏子×湘南工科大学附属高等学校3年生有志「H・A・N・A~人間と動物と自然とAI~」

 

展示作品はこちらで検索

 

地下道ミュージアムを手掛けてみての感想は?

岩崎さん「アートは多様性なので、立体、油絵、日本画などいろいろなものがあるのに、あの場所で、この素材でと限定されるのはアーティスト側からするとまだ(仮)のような感じですね。

街中に、立体オブジェがあればすごく良いと思うんです。東京の丸の内なんかオブジェがどんどん増えて楽しくなってきています。ニューヨークにも、わけがわからないけど大きなオブジェがドーンとあるじゃないですか。ああいうものは凄く大事だと思うんですよ。

日常にアートがないと、特別でわけのわからないもので終わってしまう。

日本は、美術が遠くないですか?

私は美術に魅力を感じているし、その魅力をもっと知って貰いたいと単純に思いますね。

ニューヨーク、スペイン、東京の丸の内などに行くと心が和みます。

アートは癒しの効果があると思います。

平塚市美術館は素晴らしいじゃないですか。企画も充実しているし。学芸員さんが優秀なんですよ。でも、美術館に行かないといけない。街の中にアートがもっと増えていくといいなと思います。」

 

湘南ひらつか野外彫刻展

平塚市内の総合公園や博物館、駅前、商店街にもアート作品があります。

それらは「野外彫刻展」として、「彫刻でまちづくり」「地域の活性化」を目的に、1987年に秦野市、1990年に小田原市で、第三弾として1993年に平塚市で開催されました。

湘南の街“ひらつか”を表現する作品が公募され、411作品の応募があり、20作品が選ばれ制作されました。

みなさんが、ご存知の場所にもあります。いくつか紹介します。どこにあるかわかりますか?

 

海外留学の経験もある岩崎さんにアートに関する日本と外国の考え方は違いますか?と質問したところ岩崎さんは、「全然違います」と力強く言い切りました、その理由は?

岩崎さん「日本は美術を特別なものと、遠ざけている。外国の家には普通にアートが飾られています。

街中に大きなオブジェなどが平気でありますね。丸の内など都内では増えてきましたけど、そういうのがあると、豊かな気持ちになると思います。日本は美術の時間が少ないですね。」

岩崎さんは、高校の美術教師をされていて、美術鑑賞に力を入れていますが?

岩崎さん「美術館に行って、レポートを提出させています。現代アートは観てもわけわからないですよね。

わからないものを、わかろうとする作業は凄く大変なことですよね。それを高校生にやってほしいのです。観る力が養われればいろいろなことが変わってくると思います。人間として大きくなれる気がします。自分で創り出すことも大切ですが、同じくらい観ることも大切だと思います。

アートの見方は自由で、答えは一つではないです。高校生は大学受験などで勉強、勉強で、それも一つの答えを求めて息苦しいんですよ。でも、社会に出たら答えは一つではなく、複雑な問題を解決していかなければならないので、今の勉強だけでは息詰まるんですよ。道徳とか、美術とかで考えさせてあげられたらと思います。」

 

今後の夢

岩崎さん「アートの魅力を伝えていきたいです。アートで、お腹が満たされるわけでもないし、寒さをしのげるわけでもなし、お金を産みだすマシンでもありません。でも、心が豊かになってもらえたらと思います。体調を崩して、入院したときに病院に飾ってあった工藤甲人(くどう こうじん)の作品に癒されたので、人の心を豊かにさせる素晴らしい作品を作りたいです。」

 

ライターの独り言

日本は、家に美術作品を飾ろうとすると、高価なものを飾らないといけないような感覚に陥りやすい気がします。子供の書いた絵でも額に入れて飾ってもいいのにと思います。ひな祭りでも、七段飾りとかでないとひな祭りができないような風潮があるような気がしますが、もっと、カジュアルで身近なものにしていかないと、どんどん文化が遠ざかっていく気がします。

「日本はアートが遠い存在」。またまた考えさせられた取材でした。

岩崎さん、ありがとうございました。

 

ライター:清水浩三