平塚市西部の吉沢地区に地域の人びとと大学生が協働で運営している「吉沢寺子屋」があります。

12月の行事であるクリスマス会の様子と、地域の人びとと大学生がどのような想いで活動しているのかを取材しました。

 

「吉沢寺子屋」はどんなところ

平成22年平塚地域自治推進モデル事業として、地域の課題解決のため協議会が発足し、平成23年に子どもたちの学びと遊びの場として「吉沢寺子屋」を設立、平成29年に7年目に入っています。

吉沢地区町内福祉村「ふれあい交流部会」の寺子屋担当の皆さんが事務局として取りまとめ、平塚地区BBS会(Big Brothers & Sisters Movement、代表者:小柳健人さん(神奈川大学生3年生))が企画・運営を担当し、湘南NPOサポートセンターが運営のアドバイスなどをしています。寺子屋の児童は小学校の1~6年生、現在登録人数は31人です。

活動は毎月、第2月曜日と第4土曜日に吉沢公民館で約2時間、勉強とレクレーション、そしておやつの時間という楽しみもあります。季節によってハローウィンパーティやクリスマス会を実施しています。

詳細は「吉沢寺子屋の活動」、寺子屋ブログ「てらっ子ブログ」をご覧下さい。

 

「クリスマス会」をみんなで盛り上げる

では、クリスマス会の様子を見てみましょう。

参加者は、寺子屋児童21人、寺子屋卒業生(中学生)3人、先生役のBBS会メンバー10人(神奈川大学生と卒業生3人)、地域の皆さん(内、事務局スタッフ4人)など総勢48人です。9時前からみんなで飾り付け、そして9時30分からスタートし工作、レクレーション、食事のスケジュールです。

最初はクリスマスにちなんでリース(飾り)を作る工作の時間です。リースを形取った型紙、飾り、ハサミ、のりを準備し、まずBBS会のお兄さんが手作りの見本を見せながら作り方を説明、それから子どもたちが取り掛かります。手早くできる子、はさみが上手く使えない子「うまく切れない」、「紙はこうもって、ハサミはここから切るんだよ」と身振り手振りでお兄さん、お姉さんは教えます。事務局の皆さんも子どもたちの様子を見ながらやさしくアドバイス。そして、段々子どもたちの思いが形になってきました。

次はレクレーションの時間。BBS会のお姉さんのリードで人間知恵の輪、ハンカチ落し。人間知恵の輪は、最初にグループになった子どもたちが全員ランダムに手を繋ぎ、そこからもつれている手を“ああだこうだ”と言いながらほどいて一つの大きな輪にしていきます。その次はハンカチ落しです。年を重ねた年代には、なつかしい遊びですね。この企画の構想と準備はBBS会のメンバーが行ったもので、色々な情報はネットで検索と現代の若者らしいところが見られますが、自分達なりにアレンジして行っているようです。

いよいよサンタさんの登場で、子どもたちにプレゼント。

最後に、お待ちかねのお昼(食事)の時間。例年通り地元吉沢の「ママの会」の皆さんが腕によりを掛けて作ってくれたお稲荷さんと手巻きずし、鳥のハーブ揚げ、サツマイモのスープ、そしてデザートです。

お腹がいっぱいになったところで終わりの時間。事務局とBBS会の皆さんは公民館の玄関で子どもたちをお見送り。子どもたちは多くの人びととの楽しかった思い出と共に帰って行きました。

 

「クリスマス会」を振返える

毎回、事務局の皆さんとBBS会メンバーにより、子どもたちの様子はどうだったか、上手く運営できたかなど、反省会を開いています。

「進行が今一だった。もっと事前準備が必要だった」「仲間の輪から外れてしまう子の対応をどうするか」「子どもの興味は時間帯により波がある」「食事に好き嫌いがある。嫌いなものを押し付けはできないけど、作って頂いた人への心配りが必要」など次々と多くの意見が出ました。

BBS会の先輩(茨城県から来訪です)からは、問題の解決法として、「年が近い中学生(寺子屋卒業)の意見を聞いてみるのも手だよ」などの“なるほど”と思われるアドバイスも出てきました。

このように、事務局とBBS会の皆さんの印象が薄れない内に反省会を行う、そして解決策を考え、共有化して行くことが継続して行く上での重要なポイントと思われます。反省会で出たこと、対策を考えて実行することは、この活動を続けて行く上での宝、財産になって行くでしょう。

事務局の皆さんからは、リース作り、レクレーション共に良かった。仲間の輪から外れていた子への対応も良かった。ここ数年で一番の集りで良かったとお褒めと感謝の言葉がありました。

 

BBS会の皆さんはこんな想いをしている

楽しいこと、うれしいことは、「勉強の時間で分かったと言ってくれたこと」「理科の実験や工作の時間で喜んで貰うこと」「子どもに名前を呼んで貰う、頼って貰えること」、そして「子どもたちがみんなバラバラで思い思いのことをやっているのを見ることも楽しい」とも。困っていること・悩んでいることは、「(授業、行事、バイトがあって)月曜日に参加できる人が少ないこと」「子どもたちをどの程度までコントロールして良いか難しい」。そして理想とする寺子屋は「中学生になっても、大人になっても来てくれる」「こんにちは。お願いします。有難うございます。と自然に挨拶ができる」「色々な人々が係れる場所であって欲しい」など多くの想いがありました。

BBS会の皆さんは、忙しいこともありながら、何とかこの活動に係りたいと言う熱意が感じられ、そしてこれらの活動を通してきっと自分自身も成長しているのではないかなと思いました。

 

地域の人びとの想いは ~事務局長の中山裕史さんに伺いました~

「最初は、どこで何をやったら良いのかが分からなかった。ボランティアで吉沢公民館に来ていた神奈川大学生に声を掛けてみたのがBBS会との繋がりの始まり」。そして公民館、自治会、湘南NPOサポートセンターなどと協議しながら立ち上げてきたそうです。活動のポイントは「学校や塾と同じことはしないこと。学生にはなるべく自由な雰囲気つくりをして貰う。ただオーバーペースになるところはコントロール、目に余る場合は粘り強く注意して貰うようにお願いしている」そして、「学生は卒業して行くが、この活動が継続して参加する子どもたちも段々増えて行っているのが素晴らしい」と。

想い描く寺子屋は、「寺子屋の卒業生が大学生になり、今度は教える立場になって戻ってきてくれること。この寺子屋は7年目になり、ここに通っていた子が、中学生になって地域ボランティアとして手伝いに来てくれているので、上手く回って行くと思う」。最大の悩みは、「一緒に行動してくれるスタッフを募集しているのだけど、なかなか見つからないこと」これはどこの活動でも同じ共通の課題です。

最後にこの活動してうれしいことも聞きました。「子どもたちの成長が見られること、道端で会った時に“寺子屋のおじさん”と呼んで貰えること」穏やかな笑顔が印象的でした。

事務局の皆さん(左から中山さん、野川さん、佐野さん、高倉さん)

 

 取材を終えて思うこと

今回の取材の動機は、BBS会のメンバーに会って、今どきこんな若者が居るのだと感心したことからです。そして実際に活動している様子を見てみたい、その活動を端的に表しているのが「吉沢寺子屋」と聞きました。実際の活動を見て改めて素晴らしいとの一言。まず感じたことは、子どもたちとの距離が近いというのが第一印象です。なぜこのようにできるのだろうか? 育った環境、自らの成長過程で学んだことなど色々な要素があるでしょう。そして学生たちを上手くサポートして、ある時はアドバイスしてくれる地域の人びとがいるからこそだと思います。

市内にはいくつも子どもの健全育成について活動している団体があり、湘南NPOサポートセンターでも「須賀の寺子屋」を取材しています。それぞれの団体は地域の力を結集し、工夫や苦労しながら、そして問題を抱えながらも活動していることと思います。その活力は将来を担う子どもたちの成長を夢見ているからではないでしょうか。これら団体の活動を覗いてみませんか?そうしたら参考になることがあるかも、また悩みや問題点を解決できる糸口を見付けられるかもしれません。そしてまた頑張る活力を得ることができるでしょう。

(取材 2017.12 田中 勉)