ひらつか地域づくり市民大学修了特別ゼミ「あの人と座談会」第2回目は、平塚市八幡地区で活動を始めて10年が過ぎようとしている「やわた子ども村」の高橋村長さんと、事務局長の田中さん、事務局の高橋さんの3名をお迎えして、立ち上げの経緯や子どもの居場所づくりについて詳しく伺いました。

=八幡地区はJR平塚駅の北側に位置し、県合同庁舎、また東西に工業地帯を抱えています。
この地区は、東八幡1〜5丁目、西八幡1〜4丁目の地域が、旧名称の字名で8つの単位自治会から構成されています。また、戦前から地域を鎮守する八坂神社が鎮座しています。
人口は8,612人、世帯数は3,949世帯自治会加入世帯は2,640件で67%の加入率です。(平成27年4月1日現在)
=“やわた”ちいき情報局よりhttp://hiratsuka.johokyoyu.net/area/yawata/default.asp

ーやわた子ども村が生まれた背景−

平成15年ころより子どもを取り巻く環境が変化するとともに、子どもたちをめぐる深刻な問題が発生し、子どもたちが安心して集える居場所が必要となってきました。また、個々の家族だけによる子育ても限界を迎えつつありました。そのような中、作られたのが八幡地区独自の学童保育、全児童を対象とした、地域による子育ての場です。当時を振り返って事務局の田中さんはこう言います。「共働き世代の増加に伴い、学童が地域の願いでもあった。全保護者対象にアンケートをとり、殆どの回答が『学童は必要』ということだったが、『役員をできるか?』という問いにはみんな『難しい』という回答だった。その後市側もアンケートを取ることによって学校とのコンセンサスができ、PTAも協力できるようになった。拠点性の問題、運営側の問題などについて、当時の学校長は『八幡小らしい解決方法を見つけましょう』とおっしゃっていただいたことが大きかったですね。」

ー平成17年、やわた子ども村の活動が始まりましたー

学童保育の子どもたちは、学校が終わるとすぐ学童へ行きます。学校の近くであれば移動も安心ですが、地域の実情はそう簡単ではありません。できれば学校の敷地内か空いている教室が利用できれば、親も安心です。たまたま八幡小学校には当時余裕教室がありました。学校長も理解を示してくださり、一緒に市や教育委員会へ使用許可願いに協力してくれたそうです。通常なら難しいとされている教室の利用を熱意あるメンバーの願いが通じ、一定の条件のもと、許可されたそうです。市の青少年課と意見交換を重ね、連合自治会の協力、PTAやその他多くの方々の協力によって、放課後子ども教室が始まりました。

ー子ども会の解散・サロンやわたの活動ー

自治会活動や地元神社のお祭り、地区運動会や子ども大会など、子どもがかかわることで盛り上がる地域の行事。子どもたちの参加を呼びかけるには子ども会の存在も大事です。しかし、共働き世帯の増加や役員のなり手不足によって、どこも子ども会の存続がたいへん厳しくなっています。八幡地区も同様の課題を抱えていたところ、とうとう平成23年には子ども会解散という結果に。そこでやわた子ども村では、子ども会も引き受けようと子ども村子ども会として新たに発足しました。子どもを持つ親にとっては地域が見守ってくれるという安心感は何ものにも代えがたいとのこと。子ども会離れと言われていますが、今では加入する子どもたちもずいぶん増えたそうです。

サロンやわたは、平塚市が設置する町内福祉村の活動です。高齢化が進む中で、地域のお困りごとは地域で助け合って解決、活動は地域の自主運営という形で行われています。やわた子ども村では、この運営も引き受けています。空き店舗を利用して高齢者の居場所づくりや相談対応、地域の依頼に応じてゴミ捨てのお手伝いや見守り活動も行っています。

   

 

ー駄菓子屋は子どもたちの大好きな場所ー

サロンやわたでは毎週水曜日の午後に駄菓子屋をオープンします。駄菓子屋には決まりがあり、必ず一度家に帰ってランドセルを置いてからくる、買い物は300円以内、会計は一人一回にまとめる、会計が済んだら、出口からすみやかに退出、というものです。子どもたちは10円や20円の駄菓子を計算しながら買っていくそうです。高学年の児童は年少の子どもたちの計算の手伝いをしてあげたり、買ったものを一緒に食べたりと、異学年の交流もあるとのこと。たまには会計担当のおばちゃんのお手伝いもしてくれるそうです。

ー地域は価値観の違う人とどう生きるか、が鍵ー

田中さん、高橋さんは、やわた子ども村は、10年間やってきてようやく市民権を得たと語ります。子どものためとはいえ、学校や地域の中で新しい活動をするには、地域の理解がなくてはできません。地域には様々な価値観を持った方が住んでいます。最低10年は継続していかないと理解は得られないだろうという覚悟で始めたと言います。毎年夏に開催する夕暮れコンサートには400名を超える方が参加し、老若男女が歌や音楽を楽しみ、最後には全員で踊るとか。そこには地域を超えたつながりが生まれているそうです。

また、田中さんは、このような活動をするには「夢を持つことが大事」、夢に向かって進んでいけば、いつか必ず夢は叶うとおっしゃいました。田中さんや高橋さんの活動を大きな心で支えてくれるのが村長の高橋さん。「細かいことなんて気にしていたら何もできない。やってみてだめなら別の方法もある。やりながら考えるんです。私はダメといったことは一度もない。みんなを信じて何でもやってもらうんです。子どもたちもそう、信じてつきあっていけば、みんな挨拶してくれるし、何でも手伝ってくれる、みんないい子たちです」と話してくれました。

ー子どもが信用してくれる大人になるー

最後にこの言葉をおっしゃてくださった田中さん。とても奥の深いステキな言葉ですね。私たち大人が忘れてはならないことかもしれません。

3時間という中で、話が途切れることなく、会場の皆さんとの意見交換も活発に行われ、少し時間もオーバーしてしまったほど、充実した座談会になりました。最後に参加者の声をご紹介します。

 

〜立ち上げメンバーの方々の熱意が持続していることに敬服します。田中さんのお言葉の「価値観の違う人とどう生きるか」は胸にささりました。子ども村の根っこに脈うつ、こんな思いでこども村が運営され、そんな大人たちの生き方をリアルに学べる場でもあると感じました。他で真似できることではありませんが、なんと素敵な人たちなのか、こんな人に出あえて支えられて子どもたちも幸せですね。前回にも増して元気や勇気のわくお話でした。参加させていただきありがとうございました。〜

〜こどもに対しての考え方。「信頼される大人になる」の言葉、大変意味がありました。私自身、信頼される大人を目指して子ども達と接していきたいと思っています。〜

                        記 2016年2月2日

 

 

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