2020年度から始まった神奈川県の農福連携マッチング等支援事業の一環として、農福連携コーディネーターの育成を図る活動を行っています。今回は一般から公募で参加申込みのあったコーディネーター候補生を対象に農福連携事業の概要と事例の紹介を行いました。このセミナーでは福祉施設関係者及び農家・農業関係者への事業の啓蒙を推進することを目的として2日間にわたるセミナーを実施しました。第1日目が農業編、第2日目が福祉編となります。

【事業の目的】

 昨今、地域の農業においても少子高齢化等による人手不足や後継者問題が顕在化しています。一方で福祉分野では障害者の自立や働く場の確保が喫緊の課題になっています。そこで平成28年度に神奈川県が策定した「ともに生きる社会かながわ憲章」によって提唱される障がい者の就労機会の確保や工賃の向上による自立支援を目的として、農業と福祉を結びつけることで農業と福祉の両方の課題を解決するための事業です。
その一環として、
 1.農福連携コーディネーターの人材育成
 2.先進事例を視察するスタディツアー
 3.農業者と福祉サービス事業者等とのマッチングの場づくり
の三点に焦点を当てて神奈川県、平塚市、JA湘南、中間支援組織、がタッグを組むことによって実現していこうという取組みの中で今回は、1のコーディネータの人材育成を目的とした研修を実施しました。

【コーディネーター育成研修の位置づけ】

 市内の農業者と障がい福祉関係者をマッチングして結びつけるためには、農業と障がい者福祉の両方の知識と事情に通じた専門家の存在なくしては語れません。しかしこれまで、農業と障がい者福祉のつながりは決して強いものではなく、どちらかといえば双方が独立独歩で歩んできた部分が多いともいえます。
 そのような現状を鑑みて、農業と障がい者福祉が手を取り合ってお互いにとってメリットのある関係を築き、地域社会の活性化を実現するためにそれぞれの間の橋渡し役となる人材の育成が大切との観点から今回の育成研修の実施に至りました。
第1日目(農業編)
 令和2年9月18日(金)10:00〜12:00
第2日目(福祉編)
 令和2年9月25日(金)10:00〜12:00
 会場:両日ともに平塚市教育会館

【研修内容】

 冒頭で神奈川県共生社会推進課副主幹の相場様から、神奈川県の障がい福祉対策の一環としての農福連携マッチング等支援事業の目的とゴールについての説明のあと、JA共済総合研究所主席研究員の濱田健司様から農福連携事業についての概要と先進事例などのお話をいただきました。また第2日目は平塚市を中心に数多くの障がい者支援施設を運営されている進和学園統括施設長の久保寺一男様から障がい者福祉分野の視点から見た農福連携の現状について事例を交えながらお話をいただきました。
 農業編では濱田様から、地域農業の現状の問題や取り組みを数字を上げて解説していただくとともに、これからの地域農業にとって必要とされるものやそれを実現していくための取り組みをお話しと、これからの農業にとって熱心な働き手を確保していくことの重要性について参考になるお話を伺うことができました。
 第2日目の福祉編では、農業から見た働き手不足という課題だけではなくこれから農業を担っていただく可能性のある障がい者の立場から、「どんな作業が向いているのか」「就労している障がい者の収入の低さ」などについてお話を伺うことができました。決して大きな利益が出せるわけではない農家さんがいかにして障がい者雇用を実現していくかについても作業の出来高制による賃金の支払いなどについての実例などをご紹介いただきました。出席者からも多くの質問が寄せられ予定時間をオーバーして盛況のうちに終了しました。

【今後の展開】

 今回の育成研修によって得られた知識を取り組みの第2弾になるスタディーツアーによって農福連携の現場で実際に目で見て実感していただくための準備を進めていく予定です。スタディツアーでは三浦半島・横須賀市にある2軒の農家さんと藤沢市の花き農家さんを訪問し、作業の現場や環境、農福連携をやってよかったことや課題点などを現場の農家さんのお話を伺っていきたいと思います。
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