地域づくりは、その地域の歴史や環境、そこに住む人々によって大きく違いがあります。

平塚市の豊田地区は、市中心部からやや北西へ拡がる農村地域で、田畑の宅地化に伴い、新しく移り住んできた人々が地域の住民となって40年~50年が経とうとしており、地域の支え手でもある自治会や地域活動団体の役員の新旧の交代が顕著に進んでいる地域である。

10数年前までは、まだまだ古い慣習が残っていて地域の決め事は長老と呼ばれる重鎮たちが仕切り、新参者(40年住んでいても新参者と呼ばれる)は、たとえ良いアイディアを提案したとしても受け入れてもらえなかったそうだ。そうなるとおのずと地域づくりへの関心が薄れてしまう。

しかし、その風潮はやがて高齢化とともに、自然と無くなりつつあるようだ。

2月9日、私たちはそんな地域づくりの現状をお聞きしたいと豊田地区へ向かった。ここは、平塚市が推進・設置を進めている町内福祉村がまだできておらず、地区の社会福祉協議会が自治会や民生委員、公民館と連携して高齢化したまちの課題に自発的に取り組んでいる地域だ。

この日は豊田地区社会協議会会長の大畑さんと豊田公民館館長の境さんにご足労いただき、お話を伺った。この地域もかつては農村地帯であり、新旧が入り混じった地域で、5〜6年前までは地域課題の捉え方や考え方に違いがあってかなり難しい状況だったそうだ。課題感の違いや権利が複雑に絡み合い、時には言い争いの議論も何度かあったという。

しかし、今では自助・共助の支え合いのまちづくりに向かって、8つの自治会が連携して、高齢者や生活困窮者を支えようと動いている。そこに住む住民の知恵や協力関係で成り立っていて、何といっても魅力はずっとここに住み続けたいと思う地域愛あふれる人がたくさんおられることだ。

大畑会長は「この地域は8つの自治会がすべて自治会館を持っていることが強みだと思う。今あるものを活かすことで交流の場が出来るのではないか。そう考えた時、8つの自治会長さんが快く了解してくれて、毎週どこかの自治会館で交流サロンを開催しているんです」また、「高齢者に、2キロも離れたところに”いらっしゃい”と言っても来れるはずがない。第一、足がない。でも100〜200メートルも歩けば行ける自治会館だったら来れるんです」そこに行けば食事会やお話会、健康体操も開催されるとあって、多い日には40人以上も集まると言う。「送迎ボランティアという話もあったが、事故や責任について考えると先に進まない、近くにある自治会館を利用すれば、そんな心配もいらなくなりました」と語る。境館長も自治会長の経験者、地域のことは手に取るようにわかるとあって、陰になり日向になり活動を支えておられる。

「交流サロンは、参加者一人につき150円が平塚市社会福祉協議会から補助されているが、ここ豊田地区はあまりにも参加者が多いため、他地区との差が歴然だそう。しかしここにきて補助の仕組みが変わり、一人当たり90円になってしまったたとのこと。その分の経費は町内福祉村を設置すれば解消されるのでは?という話もある。本来地域の人にとって一番大切なことは何なのか?ということ、せっかくいい取り組みが行われているのでそれは崩したくない。そのようなことを改めて考えながら検討したい」と話す。

自分たちの取り組みを生き生きと語るお二人の笑顔がとても頼もしく、取材する側の私たちが返って元気と勇気をもらった貴重な時間でした。


先日の朝日新聞で、地域福祉の窓口が一本になるという報道があった。目まぐるしくかわる社会保障制度、介護保険法、障がい者支援法等。制度は使う側の市民が使いやすくなければ意味がない。官側にとってメリットがある仕組みではなく、市民にとってわかりやすい仕組みであってほしい。

 

20170212    記 美

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